ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

はてなダイアリーから移行。元は読書メモ、今はツイッターのログ置き場。

読書

たのしい写真

お盆休みのようである。そして終戦記念日。夏の日差しのなかあちこちにころがる蝉の死骸と敗戦を重ねてイメージするのは、軍備増強とか核装備とか言う人びとと同じようなファンタジー的思考なのか。 ホンマタカシ『たのしい写真 よい子のための写真教室』(…

佐々木敦『ニッポンの思想』(講談社現代新書、2009年7月)

ニッポンの思想 (講談社現代新書)作者: 佐々木敦出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/07/17メディア: 新書購入: 17人 クリック: 199回この商品を含むブログ (167件) を見る 著者の佐々木敦はぼくと同年代なのだ。肩書きは批評家、だろうか。80年代のいわゆ…

理系の世界

やらなくてはいけないことがあり、しかしそれは進まず、さまざまにわいてくるあれこれの関心事もそのやるべきことに圧倒されて中途半端なつまみ食いになり、結局身動きとれぬ状態のままなにもせぬ時が過ぎていく、という状況を少しでも崩すべくブログなどを…

岡田暁生『音楽の聴き方』(中公新書、2009年6月)

クラシック音楽を中心に、「聴き方」つまりは鑑賞の「型」を指南しよう、という本。感性にゆだねるのではない、学習すべき「聴き方」の枠組みがある、というのである。こういうタイトル、テーマの本は、ありそうで、ない。それはもちろん、クラシック音楽は…

徳永康元『ブダペストの古本屋』(ちくま文庫、2009年6月)

ブダペストの古本屋 (ちくま文庫)作者: 徳永康元出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2009/06/10メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 38回この商品を含むブログ (27件) を見る 徳永康元といえば、ぼくにとってはまずはマレーク・ベロニカの『ラチとらいおん』の…

『世界文学は面白い。』を面白く読んだ

奥泉光といとうせいこうの、おなじみ「文芸漫談」シリーズ、『世界文学は面白い。』(集英社、2009年6月)世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周作者: いとうせいこう,奥泉光出版社/メーカー: 集英社発売日: 2009/06/05メディア: 単行本購入: 2人 クリック:…

夏目房之介『本デアル』(毎日新聞社、2009年5月)

出勤前に本屋に寄って、装幀にふと目がとまって買い、電車の中で読む。本デアル作者: 夏目房之介出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2009/05/28メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る 中身は短い書評を集めたもので、…

岡田温司『キリストの身体』(中公新書、2009年5月)

フランクフルトに留学中、近所にあったのでよく行っていたシュテーデル美術館に、ファン・エイクの「ルッカの聖母」があった。きらびやかな玉座に座り、はだかの幼子キリストに授乳するマリア。聖母の身にまとう深紅のガウンが強い印象を残す絵である。たし…

脳の本

極秘帰国中の恩師を囲んで、寿司を食べた。いろいろたいへんそうだが、お元気そうで何より。 帰宅途中の電車の中で、池谷裕『単純な脳、複雑な「私」』(朝日出版社、2009年5月)読了。単純な脳、複雑な「私」作者: 池谷裕二出版社/メーカー: 朝日出版社発売…

プロップが文庫に

愛読している月曜社のウラゲツ☆ブログ、近刊チェックのエントリーを見ていたら、来月10日にウラジーミル・プロップ『魔法昔話の研究:口承文芸学とは何か』が講談社学術文庫から出る、と。そういえばアンドレ・ヨレスの『メールヒェンの起源』(『単純形式』…

矢内賢二『明治キワモノ歌舞伎 空飛ぶ五代目菊五郎』(白水社、2009年4月)

面白かった。 日清戦争までは、歌舞伎は同時代を描く力を持っていたこと。黙阿弥と菊五郎がその言葉、身体・芸を駆使して、事件や新風俗、舶来のサーカスや気球などを歌舞伎の舞台に乗せていたこと。 専門家には自明のことなのかもしれないが、達者な語り口…

いろいろとせっぱつまっていて、

メモしておきたいことは、たとえば竹富健治『鈴木先生 7』(双葉社、2009年4月)にはもうついて行けないかも、「複数の声」が聞こえるどころか作者の完全ご都合主義的コントロールの世界に入っちゃってるんですけど、とか、こうの史代『この世界の片隅に』(…

「ニューモデルマガジンX」という雑誌を

久しぶりに買ってしまった。うちのクルマがモデルチェンジするというのでちょっと情報を、と思い。版元の三栄書房は、中学高校時代に「AUTO SPORT」を毎号買っておりました。懐かしい。星野一義、中嶋悟、高橋国光、長谷見昌弘・・・。 この雑誌、発売前の新車…

ホーンテッド・マンションだけはちょっと楽しかった

春先にディズニーランドに行ったのだがそれは家族サービスで運転手としてであってあまり積極的に行きたいところではなく、しかしそれなりに家族の休日を楽しんだのだが、ホーンテッド・マンションについてはドイツ・ロマン派などというものに関心を持ってい…

イヴ・シュヴレル『比較文学入門』(白水社、2009年3月)

比較文学、ということで言えば、この3月に白水社のクセジュから出た『比較文学入門』(小林茂訳)がとりあえずの入門書としてちょうどいい。比較文学入門 (文庫クセジュ)作者: イヴシュヴレル,Yves Chevrel,小林茂出版社/メーカー: 白水社発売日: 2009/03/01…

「比較文学」ということは

日本人が異国の文学を研究するということにこの国の社会は今やほとんど意味を与えない、という状況であることは明らかだろうし、それを生業としている者たちは「なくってもなくってもいいもの」(by志ん生)に携わりつつお給金をいただいているということを…

百人一首

昨年度の終わり、娘のクラスでは百人一首を覚えていた。もちろん対戦も。うちの娘は30くらい覚えたようだ。小学校低学年は意味はわからずともリズムで楽しんでいるようす。生意気にも「むすめふさほせ」などと言っているのであった。 ぼくもつられて、昔読ん…

ひびのあれこれ

金曜日、授業に行ったらでかい教室に学生がいっぱい。ふたクラス分のつもりで用意していったプリント100枚、で足りない! この人数で語学の授業が成立するのだろうか? 聞けば1年生の授業開始初日の1限目とのこと、ちょっと覗いてみよう的な学生が多いという…

新たな1年が始まった

昨夜、よしもとばななの新潮文庫の新刊(日記形式のエッセイ集)をベッドの中で読んでいたら、なんだか落ち込んできて仕事に関する過去十年の無為とこれからどうなるのだろうぼくは的な重ーい気分が襲ってきて、眠れなくなってしまった。 よしもとばななを読…

子どもたちの「自尊心」は大切だが、その前に

ウェブ上のニュースサイト「産経ニュース」に、「自分嫌いをなくそう! 都が小学生に「自尊教育」導入へ 」(2009.3.11 01:13)という記事があった。 http://sankei.jp.msn.com/life/education/090311/edc0903110113000-n1.htm 東京都教育委員会が都内の小中…

新宿にて本屋をさまよう

昨年11月にオープンした、ブックファースト新宿店へ行く。 ブックファーストは阪急電鉄グループの書店だが(だから関西が中心)、関東でもその数を増やしている。渋谷にでかいのがあったけれど、ビルが壊されて閉店、新たな旗艦店として新宿は「モード学園コ…

清谷信一『ル・オタク フランスおたく物語』(講談社文庫、2009年1月)

昨日ようやく今年度の授業が終わった。児童文学の講義、今年はあまりうまく話せなかった。生命力の低下というか体と精神の不調は、授業の成果にてきめんに反応するのだ。 まだ試験の採点が終わらない。終わらない。読むものといったらマンガや雑誌ばかりで、…

岩波新書2冊。

今週は期末試験週間であった。ひたすらテストを配り、やってもらい、回収する日々。コマ数をこなすしかない非常勤講師のこの時期は、テストと採点で埋め尽くされる。 試験中は「監督」なので、本がゆっくり読めるわけではない。学生たちに目を配りつつ読める…

日高敏隆『動物の言い分 人間の言い分』(角川oneテーマ21、2001年)

出先で読むものがなくなり、駅ナカの小さな本屋で購入。肩の凝らない動物エッセイを、電車の中で楽しく読む。 日高敏隆は、翻訳がすごい。いくつの言語ができるのだろう。もちろんコンラート・ローレンツから、ドーキンスまで。そのほか僕が読んだものでいえ…

福岡伸一『できそこないの男たち』(光文社新書、2008年10月)

昨年末、娘が通っている民間学童保育でクリスマス会があった。女の子たちの出し物のひとつが、懐かしの曲「ジンギスカン」で踊る、というものだった。これがまた激しいダンスで、さびの部分で右足を左足の前で曲げて左手でタッチ、その右足を今度は左足の後…

ミカエル・ウスティノフ『翻訳 −その歴史・理論・展望』(白水社[文庫クセジュ930]、2008年11月)

原書は2003年刊。 「翻訳論」と呼ばれる分野に関するハンドブックである。 目次を挙げる。 第一章 言語の多様性、翻訳の普遍性 第二章 翻訳の歴史 第三章 翻訳の理論 第四章 翻訳の作用 第五章 翻訳と通訳 第六章 翻訳の記号 訳者の言うとおり、もとがフラン…

西原理恵子2冊。

『毎日かあさん5 黒潮家族編』(毎日新聞社、2008年12月)と、 『この世でいちばん大事な「カネ」の話』(理論社、2008年12月)。毎日かあさん 5 黒潮家族編作者: 西原理恵子出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2008/12/15メディア: 単行本購入: 19人 クリ…

橋本治と内田樹と高橋源一郎とおじさん

『橋本治と内田樹』(筑摩書房、2008年11月)を読む。橋本治と内田樹作者: 橋本治,内田樹出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/11/27メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 37回この商品を含むブログ (50件) を見る寝る前の本としてちびちびと読んでいたら…

谷岡剛史『チェコへ、絵本を探しに』(産業編集センター、2008年11月)

チェコへ、絵本を探しに (私のとっておき)作者: 谷岡剛史出版社/メーカー: 産業編集センター発売日: 2008/11/01メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (6件) を見る「チェコ」と「絵本」。この2つの単語が並んだだけで、なんとなくドキドキ…

飯田道子『ナチスと映画 ヒトラーとナチスはどう描かれてきたか』(中公新書、2008年11月)

「新書」の持つ役割は最近だいぶ拡散してきているけれど、ある分野なり項目なりについてクリアな見取り図とそこからどう調べて行けばよいかの道しるべを示してくれるもの、というのがまずは基本にあるんじゃないか。 それを読めば、まずわかりやすい地図が頭…