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徳永康元『ブダペストの古本屋』(ちくま文庫、2009年6月)

ブダペストの古本屋 (ちくま文庫)

ブダペストの古本屋 (ちくま文庫)

 徳永康元といえば、ぼくにとってはまずはマレーク・ベロニカの『ラチとらいおん』の訳者だ。そして、ブダペスト徳永康元プラハ千野栄一。どちらも東京外国語大学言語学の教授だった。今読んでいる西江雅之(やはり外語大で教えていたことがある)の『アフリカのことば』まえがきには、世話になった人びととして、ふたりの名前も挙げられている。
 何かにのめり込むということにおける、スケールの大きさ。「人」と「本」と「ことば」への関心の深さ。この三人の本を読むたびに、圧倒され、あこがれる。やりたいことを、徹底してやるのだ。そこに「コツ」や「ショートカット」は存在しない。
 戦前にブダペストに留学し、戦争が本格化して、ぎりぎりのところでソ連経由で日本に戻る。そんな厳しい体験と、文章の穏やかな語り口。そのずれの背後にあるだろう人柄を想像しつつ、電車の中で少しずつ読んだ。少しずつ、がこの本には合っている気がする。