ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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脳の本

 極秘帰国中の恩師を囲んで、寿司を食べた。いろいろたいへんそうだが、お元気そうで何より。
 帰宅途中の電車の中で、池谷裕『単純な脳、複雑な「私」』(朝日出版社、2009年5月)読了。

単純な脳、複雑な「私」

単純な脳、複雑な「私」

 脳研究が学際的であり、厳密にテクニカルな実験の結果が「私」とか「心」とか「自由意志」などといった領域に深く関わってくる、その次第をクリアに説明してくれる手際が心地よい。
 単純なシステムから、複雑な形態・活動が生まれてくる。こう書くとなんてことないように思えるけれど、それを実際の実験結果を示しながら説明されると、ほんとうにどきどき、わくわくする。
 ちまたで語られる「脳」の話には、あやしげなものがたくさんある。脳科学者として大活躍のあの人だって、いまやどこが科学なのかあやしげなところで仕事をしている感もある。右脳・左脳、ゲーム脳なんて言葉が出てきたら、まずは眉につばをつけてから話を聞いたほうがいい。科学を装うオカルトはそこかしこにあるし、特に教育や健康の分野では気をつけるに越したことはない。
 最先端の分野では、恐ろしいほどのスピードで過去の知識は更新されていく。だからこそ、こうやって第一線の理系の研究者がたまには研究室から出てきて一般向けに話をしてくれることが大切だ。あやしげな通説・俗説・トンデモのあいまいな言葉と、本当の専門家の緻密で怜悧な言葉の違いを、ちゃんと見分ける力を養うために。