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『世界文学は面白い。』を面白く読んだ

 奥泉光いとうせいこうの、おなじみ「文芸漫談」シリーズ、『世界文学は面白い。』(集英社、2009年6月)

世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周

世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周

 以前、ある大学である先生がある事情で後期の講義ができなくなり、それを半年間代わってやってくれないか、ということがあった。それでE.T.A.ホフマンやグリムなどをダシにしつつ文学やオペラ、バレエ、あるいは当時の社会の話、昔話やファンタジーの話、などをしたのだったが、そのとき最初の時間は引き継ぎをかねて、その先生とふたりで話をするという形になった。それが意外とやっていておもしろく、学生も面白そうに聞いていた。こんな「掛け合い」形式の講義っていうのもありなんじゃないか、と思ったのだった。
 で、前作『文芸漫談』が出たときに、ほら、役者がそろえばやっぱりほんとに面白じゃん、と。
 今回は世界文学。カフカ『変身』、ゴーゴリ『鼻』、カミュ『異邦人』、ポー『モルグ街の殺人』、ガルシア=マルケス予告された殺人の記録』・・・というラインナップは、ぼくの趣味にもぴったり。
 奥泉光の話は、「視点」や「イロニー」、作者の語り口や構成の工夫など、オーソドックスな「読み方」を押さえつつ、引用のポイントが的確。そこに正統派教養人の顔を持ついとうせいこうが絡むから、文学の講義としてクリアでオーソドックスである。もちろんそこに両人のユーモアセンスが加わって、楽しい「演し物」となっている。前に奥泉単独の講演は聞いたことがあって(夏目漱石の話だった)面白かったんだけど、このシリーズも実際のパフォーマンスを聞いてみたい。