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ホーンテッド・マンションだけはちょっと楽しかった

 春先にディズニーランドに行ったのだがそれは家族サービスで運転手としてであってあまり積極的に行きたいところではなく、しかしそれなりに家族の休日を楽しんだのだが、ホーンテッド・マンションについてはドイツ・ロマン派などというものに関心を持っている人間にはちょっと面白くかつ少し楽しかったのも事実なのだった。
 加藤耕一『「幽霊屋敷」の文化史』(講談社現代新書、2009年4月)は、無邪気にホーンテッド・マンションの「楽しさ」を前提しているというか、あるいはそもそもあんまり関心が無いのか、というところがあるとしても、なかなか手際よくリズム良く「幽霊屋敷」の歴史的背景をたどっていて、面白く読んだ。

「幽霊屋敷」の文化史 (講談社現代新書)

「幽霊屋敷」の文化史 (講談社現代新書)

 ディズニーランドのホーンテッド・マンションを、ウォルポールやベックフォード、M・G・ルイスなどのゴシック小説、いわゆるゴシック・リバイバルや、ファンタスマゴリー(ファンタスマゴリア)、マダム・タッソーの蝋人形、ペッパーズ・ゴーストといったあれこれが現代に流れきたって生まれたものとして語る、その切り口が「新書」っぽくて良い。
 著者は建築史が専門のようだが、建築関係ではウォルポールのストロベリー・ヒルノイシュバンシュタイン城が挙げられている。ホーンテッド・マンションの建物デザインの成立過程にまつわるエピソードなども、人名を挙げつつ具体的に紹介されている。
 「ゴシック(・リバイバル)」は、ぼくの中ではこのところのキーワードのひとつなのだ。ちょっと手持ちの参考文献をメモしておこう。とりあえず、「ゴシック」ということばがうたわれているものだけ。
 まずなんといっても『城と眩暈 ゴシックを読む』(国書刊行会、1982年)。小池滋・志村正雄・富山太佳夫編集で、編者の他にも高山宏鈴木博之私市保彦沼野充義高田衛、篠田知和基などの論文が収められているし、ドイツ関係では石川實池内紀が。この本はおもしろいぞう。
 紀田順一郎編著の『ゴシック幻想』(書苑新社、1997年)。これは1975年に牧神社からでた『出口なき迷宮 反近代のロマン〈ゴシック〉』を加筆訂正したもの、と。荒俣宏深田甫らが11人のゴシック小説作家を紹介している。なぜかヴィルヘルム・ブッシュも入っているのだ。そういえば紀田順一郎は、『幻想と怪奇の時代』(松籟社、2007年)で自分の「幻想文学遍歴」を語っていて、これも面白かった。
 小池滋『ゴシック小説を読む』(岩波書店、1999年)は「岩波セミナーブックス」のなかの一冊で、語りことばで書かれた、入門書として最適な本。古典的な「美」とはまったく異なるものが「美」と認識されるようになった「あの時代」をとてもわかりやすく解説してくれる。
 建築に関わるものでは、マイケル・ルーイス『ゴシック・リバイバル』(粟野修司訳、英宝社、2004年、原本は2002年)。著者はアメリカの、ドイツ建築史を専門とする学者、とのこと。白黒だが写真・図版が豊富で楽しい。
 同じ英宝社から刊行されている『ゴシック入門 123の視点』(2006年、原本は1998年)はキー・ワード集的に使える。帯に書かれているとおり、現代の文学・映画・演劇などまで視野に入れて123の項目が解説されている、入門書。
 そういえば、ここ数年、毎年どこかのクラスにひとりはゴスロリ風のファッションの女の子がいたんだけど、今年はいなかったなあ。総じて服装はおとなしくなっているような気がする。シンプル系というか。