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夏目房之介『本デアル』(毎日新聞社、2009年5月)

 出勤前に本屋に寄って、装幀にふと目がとまって買い、電車の中で読む。

本デアル

本デアル

 中身は短い書評を集めたもので、こう言ってはなんだけれど、とりたてて紹介するほどの内容ではない。夏目房之介の文章の芸を楽しむたぐいの本である。しかし、文字組も含めた本全体の作りが不思議なのだ。
 文字間がすべて等間隔に並べられている。そして約物は、句点のみ文字と同じスペースが取られ、あとの読点やカギ括弧などはみな等間隔の文字の間にむりやり入れられている。ひらがな、カタカナのフォントはレトロ調。
 だからぱっと見ると、なにやら古めかしい文字が整然とかつぎっしりと並んでいるのである。もちろん読みにくい。読みにくいが、意図はわかる。楽しめる。祖父江慎の仕事である。あとがきに「昔懐かしい書体と組みで・・・」とあるが、約物は別としてもたしかにこの活字が等間隔に並んでいるさまは昔っぽい、「活字」っぽい。こういう遊びは良いです。