ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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文学

『世界文学は面白い。』を面白く読んだ

奥泉光といとうせいこうの、おなじみ「文芸漫談」シリーズ、『世界文学は面白い。』(集英社、2009年6月)世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周作者: いとうせいこう,奥泉光出版社/メーカー: 集英社発売日: 2009/06/05メディア: 単行本購入: 2人 クリック:…

この世界のしくみを

少しでも知りたいのだ。 それには、まずは歴史を。文学なら、文学史を。いまやっているドイツの子どもの本の講義も、テーマ別じゃなくて、まずは「児童文学史」なのだ。初回に現在の状況をざっと見渡しておいて、そこに流れ込む歴史をたどる作業を地道に行う…

イヴ・シュヴレル『比較文学入門』(白水社、2009年3月)

比較文学、ということで言えば、この3月に白水社のクセジュから出た『比較文学入門』(小林茂訳)がとりあえずの入門書としてちょうどいい。比較文学入門 (文庫クセジュ)作者: イヴシュヴレル,Yves Chevrel,小林茂出版社/メーカー: 白水社発売日: 2009/03/01…

「比較文学」ということは

日本人が異国の文学を研究するということにこの国の社会は今やほとんど意味を与えない、という状況であることは明らかだろうし、それを生業としている者たちは「なくってもなくってもいいもの」(by志ん生)に携わりつつお給金をいただいているということを…

「群像」5月号を立ち読みした

ゆっくりと低空飛行を続ける精神状態にむち打ちながら、午後、T書店編集部へ行って、5月に出る予定の翻訳の打ち合わせ。もう何年か越しの仕事だけど、ようやく一段落しそう。 帰りに本屋によって、「群像」5月号を立ち読み。特集のひとつが「海外文学最前線…

E.T.A.ホフマン『マドモワゼル・ド・スキュデリ』

さて、17世紀のパリ、太陽王ことルイ14世の治世のもとフランスはその力をヨーロッパに現し、ヴェルサイユ宮殿といった建築やラシーヌら古典主義の文学、バレエなどの舞台芸術などさまざまな文化をも花開かせた一方で、その都パリは毒殺魔をめぐる王室スキャ…

柴田元幸・高橋源一郎『柴田さんと高橋さんの「小説の読み方、書き方、訳し方」』(河出書房新社、2009年3月)

昨日取り上げた本の内容に柴田元幸=アメリカ文学という項が導入されたことで、つまり「比較」の項目がひとつ増えて、さらに視野の広がる心地がする。対談形式だから読みやすいしね。柴田さんと高橋さんの小説の読み方、書き方、訳し方作者: 柴田元幸,高橋源…

高橋源一郎『大人にはわからない日本文学史』(岩波書店、2009年2月)

高橋源一郎は、「文学」についてひたすら考え続けている作家である。ほとんどの「作家」は、「文学」とは何か、なんて考えることなく作品を書いているんじゃないだろうか。わからないけど。 高橋源一郎は、自分が属しているところの日本の文学の歴史を考え続…

E.T.A.Hoffmann Jahrbuch Band16 2008

「E.T.A.Hoffmann Jahrbuch」の16号、2008年版が届く。 掲載論文は以下の通り。 Hartmut Steinecke:E.T.A.Hoffmanns Bibliothek. Eine Rekonstruktion anhand des Auktionsverzeichnisses Friedrich Sengle:E.T.A.Hoffmann-Probleme(Herausgegeben von Wulf …

山本史郎『東大の教室で『赤毛のアン』を読む』(東京大学出版会、2008年12月)

娘が『赤毛のアン』を読んでいた。妻もつられて読んでいた。村岡花子訳のやつである。ほう、と思っていたら、本屋でこのタイトルが目にとまった。東大の教室で『赤毛のアン』を読む―英文学を遊ぶ9章作者: 山本史郎出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 20…

何冊かの雑誌

・河出書房新社「文藝 2009年春号」。 柴田元幸の特集である。柴田元幸の訳すものは、作品選択にはけっこうクセがあるし(ポール・オースターはそんなにおもしろいか?)、最近はブランド化しているのをどう考えるかということもあるけれども、やっぱりおも…

高橋源一郎『いつかソウル・トレインに乗る日まで』(集英社、2008年11月)

いつかソウル・トレインに乗る日まで作者: 高橋源一郎出版社/メーカー: 集英社発売日: 2008/11/05メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (33件) を見るオビの惹句は、「著者初の、そして最後の超純愛小説」。見ての通り、表紙もおしゃれ系写真…

古川日出男と望月峯太郎

タイトルのふたりに関連性はありません。 ・・・古川日出男、『聖家族』読もうと思って買ってきて、その前につい『ベルカ、吠えないのか?』読み返しちゃった。持って出た本を途中で読んでしまい、ではと入った本屋で文庫版を思わず買った(文春文庫)。だっ…

高橋源一郎・山田詠美『顰蹙文学カフェ』(講談社、2008年6月)

「群像」に連載されていた対談を集めたもの。島田雅彦、中原昌也、車谷長吉、古井由吉、瀬戸内寂聴と。 まあね…やっぱり古井由吉がすごいね… イメージとか表現が、自分とぴったり結びついたら虚言じゃない。でも、それじゃろくなもの書けない。(…)自分が考…

ダニエル・ケールマン『世界の測量』(三修社、2008年5月)

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語作者: ダニエル・ケールマン,瀬川裕司出版社/メーカー: 三修社発売日: 2008/05/23メディア: ハードカバー購入: 5人 クリック: 81回この商品を含むブログ (40件) を見るDaniel Kehlmannの2005年の作品、Die Vermessung de…

岡野宏文・豊崎由美『百年の誤読 海外文学編』

(アスペクト、2008年3月)百年の誤読 海外文学編作者: 岡野宏文,豊崎由美出版社/メーカー: アスペクト発売日: 2008/03/04メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 32回この商品を含むブログ (38件) を見る 春の文学特集、その1。饒舌な文学語り部たる書評家ふ…

黒の増殖、白の拡散。

最近、身の回りのモノに黒が増えてきた。机の上には黒枠のディスプレイと真っ黒のキーボード、黒いブラウンの置き時計。それに先月買ったラクソのデスクライトも黒。腕時計も黒の文字盤に白い数字のもの。たとえばその中にポンとローディアのメモ帳のオレン…

DeLi Nr.8(論創社、2007年11月)

DeLi(デリ)〈8〉作者: DeLi編集部出版社/メーカー: 論創社発売日: 2007/11メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る ドイツ文学、特に現代の生きの良い作家たちの翻訳をメインとした雑誌の、第8号。昨年末に出ていたが、ようやく買…

川村二郎先生

昨日(7日)、川村二郎先生が亡くなられた。1928年生まれ、80歳。 川村先生(面識はないのだが、「先生」とつけて呼びたい)は、ドイツ文学者、文芸評論家。都立大学で教えられていた。文学、書物に関わることにおいて、おそろしいほど該博な知識を持ち、か…

Gerhart Hoffmeister:Deutsche und europäische Romantik

ゲルハルト・ホフマイスター『ドイツとヨーロッパのロマン主義』(2.Auflage, Sammlung Metzler Band170, Stuttgart, 1990.) 久しぶりに読み返した。 「ロマン主義」という名前で総称される芸術運動について、ドイツのロマン主義と、その他のヨーロッパ諸…