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高橋源一郎『いつかソウル・トレインに乗る日まで』(集英社、2008年11月)

いつかソウル・トレインに乗る日まで

いつかソウル・トレインに乗る日まで

オビの惹句は、「著者初の、そして最後の超純愛小説」。見ての通り、表紙もおしゃれ系写真。これはまたベタな・・・。
ちょっと身構えて読んだが、いやこれは、けっこうストレートだ。すごくおもしろい。
学生運動経験者である男、女性体験豊富、娘ほどの女性との「純愛」・・・これって自分のことじゃん!
舞台は韓国、なんとなく人生上の行き詰まりを感じているらしい、テレビ局勤務の中年男が主人公である。彼は20年以上前の民主化運動さなかの韓国での体験に、いまだ引きずるものがある様子。当時のある韓国の女性との恋愛と、現在の、その娘との恋愛が重ね合わされる。
最初はどうということもない、「普通」の、(表面上は)よくありそうな小説なのだが、後半にいたって、「世界の果ての宿」という旅館に娘とふたりでこもるあたりから、物語はメタの世界へと離陸しはじめる。
ある小説的仕掛けによって語りは三人称から一人称にうつり、時間は過去からいわば「永遠の今ここ」を旋回し、そしてひとつの事実が浮かび上がることで、ふいに断ち切られることになる。
最終章で、それまでの物語はメタレベルの視点に回収され、はるか未来が提示される。
そして、その最終章こそが、「超純愛」なのだ!