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柴田元幸・高橋源一郎『柴田さんと高橋さんの「小説の読み方、書き方、訳し方」』(河出書房新社、2009年3月)

 昨日取り上げた本の内容に柴田元幸アメリカ文学という項が導入されたことで、つまり「比較」の項目がひとつ増えて、さらに視野の広がる心地がする。対談形式だから読みやすいしね。

柴田さんと高橋さんの小説の読み方、書き方、訳し方

柴田さんと高橋さんの小説の読み方、書き方、訳し方

 第三章「高橋さんと柴田さんが選んだ60冊で考える「小説の読み方」海外文学編」と第四章「日本文学編」を読めば、欧米を中心とした現代の文学の流れと、日本文学の流れが、具体的によくわかる。
 たとえば、ぼくは大江健三郎がおもしろいと思っているのだけど、その理由を人に説明するのは難しい。ある種倫理的な批判をする人に対して、説得する言葉はなかなか見つからない、というか、そういう批判とはまったくすれ違うしかない、という感覚がある。高橋源一郎は、「彼は大文字のテーマを掲げる現代・近代文学の代表的作家だというふうに誤解されてきた」と言う。

世界の政治的情勢がこうで、これに対抗するためにこういう物語を作っている人というのではなくて、若い時期に言語という病気にかかって、特殊なメッセージを発し続けなければ生きていけないような病気になってしまった人、それが持っている怖さを彼の小説から感じるから、大江さんの作品はいつになっても面白いんです。(166〜167ページ)

 ああ、そうなんだなあ、と深く納得する。
 ついでに、この本の装幀が気に入りました。イラストもすてきだし、カバーの活字の選択、配置のバランス、色遣いがとてもいい。