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ドイツ・Volkachのドイツ児童文学アカデミー

ドイツはフランケン地方に、Volkachという町がある。ワインでも有名なこの町に、「Die Deutsche Akademie für Kinder- und Jugendliteratur」が拠点を置いている。
機関誌として「Volkacher Bote」を発行しており、2003年の82号から2007年の86号まで、ネットのアカデミーのサイトで読むことができる(pdfファイル)。
サイトのアドレスは以下の通り。
http://www.akademie-kjl.de/index.html
86号では、Paul-Wolfgang Wührlがピノキオについて短文を寄せているし、Heinz Röllekeが、グリムのメルヒェン「ヘンゼルとグレーテル」のおしまいに登場する、ネズミで「Pelzkappe」(毛皮の帽子)が作れる、という一節の由来について、これも短い文章を寄せている。
それによると、この唐突な一節は1843年の第5版から登場する。どうやらこれは、エルザス地方の民俗学者だったAugst Stöberがまとめたエルザスの民話集(1842年刊)からとってきたものだ、と。
ヴィルヘルムは、エルザス方言で書かれたこの本の「ヘンゼルとグレーテル」が口伝えの伝統に忠実で価値が高いと思い、自分のメルヒェン集に採用したのだが、しかしそもそもシュテーバーは、グリムのメルヒェン集をもとにして、そこにたくさん書き加えたりしつつ自分の本に載せたのだった。
つまり、ヴィルヘルムの勘違いだった、ということだ。
そして、「ネズミ」と「ネコ」はグリムのなかでも対の語として使われるが、ネコを食べて毛皮にして、という文句は・・・そうですよね、ペローの『長靴を履いた猫』にある。
もちろん、シュテーバーはそれを知っていたわけ。
さらに、グリムを下敷きに、ゴットフリート・ケラーが『Spiegel das Kätzchen 子猫のシュピーゲル』を書き、そこにまた、Pelzkappeのモチーフが登場するのだ、と。
うーん、おもしろいですね。

アカデミーでは、毎年「大賞」を作家に、「Volkacher Taler」賞を児童文学に関わる人に授与している。2008年は大賞がキルステン・ボイエ、「Volkacher Taler」賞がフランクフルト大学のH-H.エーヴァース教授と、ウィーン大学のErnst Seibert氏に贈られた。
そういえば、去年小澤俊夫が「ヨーロッパ・メルヒェン賞」というのを受賞したが、賞を主宰するヴァルター・カーン財団も、Volkachにあるようだ。

さて、Volkachとずっとドイツ語で書いてきたが、発音がわからないのだ。「フォルカッハ」かな、それとも「フォルクアッハ」かな。