ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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「ググる」をドイツ語で言うと?

今読んでいるドイツの小説の中に、こんな文が出てきた。

Ich schrieb die Wörter raus und googelte sie am Mittag im Internetcafé.
単語を書き出しておいて、昼にインターネットカフェでググってみた。

それから、

Ich habe die Webseite noch einmal extra langsam runtergescrollt.
そのウェブページを、もういちど、とくべつゆっくりと下にスクロールした。

(Andreas Schendel:Dann tu's doch,2007,S.33)
"googelte"は、googelnの過去形だ。"runtergescrollt"はrunterscrollenという動詞の過去分詞。
runterscrollenは、scrollという英語に-enをつけて動詞化し、さらに「下へ」という前つづりrunter-を添えて分離動詞として使っている。そしてgoogelnは、もちろんGoogleをドイツ語っぽい動詞にしたものだ。
これらはLehnwörter(「借用語」)であり、あるいはNeologismus(「新語」)、そしてAnglizismus(「英語風の慣用語法」)と呼ばれるものに属する。こういう単語は、ドイツ語に入り込むときに語の構成や発音、文法的用法においてドイツ語の世界に微妙な波風を立てるので、なかなかおもしろい。
googelnはもとがGoogleなのだから、-enという基本的な不定詞の語尾をとるとすればgooglenとなりそうだが、DudenのDie deutsche Rechtschreibungではgoogelnが見出し語として採用されているし、この小説でもそうなっている。ちなみにRechtschreibungdudenにこの語が採用されたのは、2004年発行の第23版から。
ドイツ語では-gleとか-cleという文字の連続は一般的ではないし、一方で-elnは動詞を作る語尾としてポピュラーな形だから、ドイツ語により「同化」して辞書に記載されるレベルではgoogelnが採用される、ということなのだろう。
Institut für Deutsche Sprache発行のSPRACH REPORT誌2006/2号に掲載されている、トリーア大学の学生によるレポート(Stephanie Wagner:Man muss nur danach googeln)によると、同様の例としてrecycle:recyceln、doodle:doodelnが挙げられている。また、googlenという形もウェブ上ではかなり見つかること、しかしよりドイツ語化した形であるgugelnはいまだまれである、と。
このレポートには、固有名詞や商品名が一般動詞化した例もいくつか出ている。たとえばeinwecken(「瓶詰めにする」、考案者のJohannes Weckから)、kneippen(「クナイプ式療法を行う」、Sebastian Kneippから)、fönen(「ドライヤーで乾かす」、電機メーカーAEGの商品名Fönから)、bladen(「ローラーブレードでスケートする」、インライン型ローラースケートの草分けであるローラーブレード社から)、など。なるほど。
Anglizismusの別の例として、downloadenという単語について学習院大学の岡本順治先生が詳しく紹介している。定型と過去分詞との間でふしぎな揺れ方をするのが、とてもおもしろい。
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20050003/edu-deutsch.html#ach-downloaden
日本語の「ググる」は、たまたま動詞語尾「る」がぴったり合って、なかなかいいですね。