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片木智年『少女が知ってはいけないこと』(PHP研究所、2008年7月)

少女が知ってはいけないこと

少女が知ってはいけないこと

副題が、「神話とおとぎ話に描かれた〈女性〉の歴史」。著者は慶應義塾大学文学部教授、フランス古典文学・おとぎ話論が専門、と略歴にある。
第1章は「エデンの園で起こったこと 禁じる父と解き放つ蛇」。蛇という存在の意味、「知る」ということと「罪」、生と死。
第2章は「おとぎ話に現れる女性の罪 嫉妬・好奇心・虚栄」。題材は「白雪姫」と「シンデレラ」。「鏡と櫛」、ヴィーナス、人魚。ガラスのくつと「寓意」。
第3章は「『心』と呼ばれた少女の神婚 『エロスとプシュケ』」。「心」のアレゴリー、「美女と野獣」型物語の原型。エヴァとプシュケ。蛇と性的な力。「心」と「肉体」・「自然」。
第4章は「心と愛 『エロスとプシュケ』から『美女と野獣』へ」。「愛」と「ウェヌスのくびき」。眠れる森の美女。オーノワ夫人の『緑の蛇』、ボーモン夫人の『美女と野獣』。17世紀に生まれた「恋愛」概念。
第5章、「ディズニー版『美女と野獣』」。読書の好きな女性。愛をめぐるパラドクス。プシュケ=ベル=本質の美。
第6章は「産みの苦しみと児殺し」。妖怪「洗濯女」。
第7章、「異類との婚姻」。異類婚姻譚ミノタウロス。nature/art。ジロドゥー『オンディーヌ』。

旧約聖書ギリシャ神話から、フランスの昔話や文学までを渉猟しつつ、女性と「心」「愛」、人間と自然、というテーマを掘り下げて語る。ぼくの関心で言えば、17・18世紀の社会における女性や恋愛のイメージを、ペローなどと絡めつつ考察しているところが、とてもおもしろかった。hänselことNさん、もし読んだら感想を聞かせてください。
ドイツの昔話を中心にして、こんなふうに大きなスケールのテーマをわかりやすく語る本が、読んでみたい。