ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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石井桃子展を観に行く

世田谷文学館でやっている「石井桃子展」に行った。
石井桃子が、翻訳をする際にいかに入念に準備し、勉強し、英語と日本語について細心の注意を払ったかが、非常によくわかる。
刊行後も、常に訳文の練り直しをし、時代に合わせて推敲を重ねている。ちょっと桁外れだ。中身がぎっしりと詰まった101年の人生、を考えて、その巨大さにしばし呆然となる。
マンガという分野における、手塚治虫のことが頭に浮かんだ。両者はそれぞれの分野における役割、意味、仕事のやり方において、似通っているところがあるのではないだろうか。手塚も常に過去の作品の描き直しをする人だった。もちろん、翻訳とマンガ創作とではその意味は異なるだろうが。
入場券と図録が、とてもいい。

図録、デザインもいいけれど、内容もじつにしっかりしたものだ。
展覧会には、長く愛用したという、桃の絵柄のお茶碗が展示してあった。それを見て、なんとなくぐっときた。それを包み込むように持つ石井桃子の手が、見えたような気がした。