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吉見俊哉/テッサ・モーリス−スズキ『天皇とアメリカ』(集英社新書、2010年2月)

天皇とアメリカ (集英社新書)

天皇とアメリカ (集英社新書)

天皇家へと向けられる視線が、あるいは天皇という存在の日本社会における立ち位置が、特に21世紀になってだいぶ変化している、ということは漠然と感じていた。
皇太子妃を巡る報道や皇太子の発言。右寄りの発言(国歌・国旗を日本中の学校で、という有名棋士の言葉)に対して「強制はよくない」とむしろリベラルな言葉を返す天皇。女帝問題。小学校でのいじめの顕在化。
それは明らかに、1990年以降の全世界的な状況の転換と並行している。布置が変化したのだ。
この本は、戦後の日本社会をなにが支えてきたのか、今どこが変化しつつあるのか、について考えるための基礎知識を与えてくれる。
占領国たるアメリカ「合州国」が天皇制を残し、そのことによってアジアにおける帝国主義的支配が日本からアメリカへと譲渡される。
かなりの程度「宗教」的なアメリカと、そのような統合の原理をもたず、その代わりに「技術」や「経済」への信仰によって社会のまとまりを維持してきた日本。
アメリカと天皇(制)との緊密な結びつきが、日本の「戦後」を支えてきたのだ。
さて、これからは、さまざまなしがらみを超えた想像力が必要となるはず。
そのひとつとして提案されているのが、日本が共和制になったとすると、何が起こるのかと考えることである。そのような思考実験を通してはじめて、次に進むべきステップが見えてくるのだろう。
このあいだニコ動で行われた「朝までニコニコ生激論」におけるベーシック・インカムをめぐる討論も、ある種そのような思考実験のひとつだったのだと思う。
とりあえず、考えられることは考えてみること。武器は知識と想像力。
だから、個人の想像力・創造力を権力によって規制しようとするような、たとえば東京都の「非実在青少年」をめぐる条例案などは、その実現が阻止されるべきなのだ。