ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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食・農業について考える

本当は読んだ小説とかブンガクとかについて考えて縷々自説を述べたいのだが考えをまとめる精神的余裕がなくてでもなにかは書きたくて適当なものでお茶を濁しているような気がするがまあいいか。
授業では教科書に入る前にドイツに関する情報を提供する時間を作るようにしているのだけれど、例えば環境問題や食についての本や資料を紹介すると、そこにはたいていBio、つまり「自然食品」、有機農産物に関する記述がある。エコロジーやリサイクルの国ドイツ、地産地消が根付いている国ドイツ。
けれど、そのBioが本当に良いものなのかどうか、今ひとつわからない。礼賛する文章を読むと、そんなに単純なのか? と疑う気持ちが一方でわいてくる。
それで、目についた参考書を読んでみたりするのだ。
本屋で見つけた、松永和紀『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社、2010年4月)。著者に対する信頼感で買って読んだ。これはなかなかいい本なのではないか。

やっぱり、コトはそんなに単純じゃないのだ。

序章 地産地消は環境に優しくない?
1章 農薬は悪なのか?
2章 化学肥料の大きな影響
3章 肉の消費と食品廃棄が招く日本の汚染
4章 食料生産とエネルギー消費
5章 有機農業では解決しない
6章 「食の安全・安心」か「もったいない」か
7章 遺伝子組み換えを拒否できるか
8章 消費者が変えるべきこと

「食」や「農業」が環境に与える影響=環境負荷には、簡単には把握できないほどに多様なファクターが絡む。いわゆるフード・マイレージの値の高低が環境負荷と一対一対応をするわけではまったくない。地場野菜を車で乗り付けてちょこっと買っていくことを繰り返すのと、大量に一度に運んできて売り場に並べられた野菜を家から歩いて買いに行くのとでは、後者の方がCO2の排出量は少ないかもしれない。
食の「安全」についてもしかり。国産のものは安全? 有機ものは安全で健康によい? そんな「信仰」も、ちょっと科学的に事実を確認すると、だいぶ揺らいでくる。
要は、新しい情報を知った上で、リスクとベネフィットを秤にかけることが大切なのだ、と。
日本のものも外国産もまんべんなく食べ、買い物は歩いて行き、買ったものは食べ残しをしない。極端な「安全」を求めない。できるだけ「知る」努力をする。個人としてとりあえず大事なのはそういうことか。
この本のあとに読んだ、石川雅之もやしもん 9』にも、農業や食糧自給率食品添加物についての議論があった。

もやしもん(9) (イブニングKC)

もやしもん(9) (イブニングKC)

樹教授もこうおっしゃっている。

どちらか一方を礼賛するなんて宗教でもあるまいし/何事も知りそして選ぶそれが大事だと覚えていて欲しい(151ページ)

いろいろ勉強すると、もう『美味しんぼ』は読む気になれないな。