ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

はてなダイアリーから移行。元は読書メモ、今はツイッターのログ置き場。

心が手痛い、じゃなくて停滞

夏休みや春休み、残り少なくなると、どうにも心と体が動かなくなってくる。
新たな始まりがいや、というのではたぶんない。
「家庭」に引きこもった、まったりした日常に、すぽりとはまり込んでしまうのだと思う。
書斎は書類と本とその他のがらくたで埋まり、椅子に座ったら身動きが取れない。
その状態に心地よくおさまって、しかし何も生産的なことをしない、というふうにして、時が過ぎていく。
風邪もひいたしな。
先日、恩師を囲む、昔からの仲間たちとの、年に一度の集まりがあった。
楽しいのである。
そして、例によって、自分がした会話を思い出してうれしくなったり、落ち込んだりもする。
両者をあわせての、かけがえのない時間、ということなのだ。
子ども時代・少年時代の僕とみんなの関係が、そこでは僕を縛る。
それは心地よく、かつもどかしい。
*****
このところの読書のおともの音楽は、ゴリラズの新譜、『プラスティック・ビーチ』。

プラスティック・ビーチ (スタンダード・エディション)

プラスティック・ビーチ (スタンダード・エディション)

これは楽しい! 17曲も入っていて、どれひとつとして同じタイプの音楽はなく、まったく飽きさせない。1曲に参加しているルー・リードのボーカルでさえ、なにやらうきうき楽しげなのだ。
*****
微熱気味で難しいものを読む気になれない(というか眠ってしまう)ので、ブルーバックスの『極限の科学 低温・高圧・強磁場の物理』(講談社、2010年2月)を読む。著者は伊達宗行。
極限の科学―低温・高圧・強磁場の物理 (ブルーバックス)

極限の科学―低温・高圧・強磁場の物理 (ブルーバックス)

いやもちろん、難しいのだ。物理学の最先端なのだから。でも、自分の専門分野とはまったくかけ離れたジャンルだから、難しくたってお気楽に読めるのだ。
この著者の本、同じブルーバックスの物性物理に関するものをうんと昔に読んで、おもしろかった記憶があった。たぶん20年以上前の話だ。あの頃までは、ブルーバックスはおもしろかった。
この本も、非常に良質な科学の啓蒙書である。温度、圧力、磁場、それらの極限において、物質がいかに不思議なふるまいを見せるか。それを実験によって見出すために科学者たちがいかに奮闘してきたか。
超伝導超流動白色矮星中性子星
おもしろかったのは、著者が考案した多層電磁石の話。基本的に電磁石の生み出す磁力には物理的な限界があり(それは強磁場によってコイルが力学的に破壊されてしまうから)、それを「カピッツァ限界」という。しかし、著者はその限界を超えるためのアイディアを思いつく。一つのコイルの中に小さなコイルを入れ、さらにその中に・・・と多層化するのである。「伊達マグネット」の誕生である。このコイルの合成磁場を計算していくと、おもしろいことがわかってきた。

第1コイルの出す磁場を一とすれば、第2コイル内の合成磁場は一・六二であると言ったが、これを正確に言うと、図4ー10のBCを表す長さ、2分の√5+1である。これは図のABを1とした時である。円弧CEの中心はBFの中点Oである。
この図形は何か。これがルネサンスの象徴ともなった黄金比図形である。

図形は省略するけれども、自然の中にこうやってふと黄金比のようなものがあらわれてくることの、不思議さに驚く。
もちろん、登場する科学的な概念や用語、数式など、その本当の意味が僕にわかるわけはない。けれど、科学者の純粋な探求心が見出すこの世界の不思議さにうっとりとし、その純粋な探求の必要性を実感する。
それを押さえたうえでの「事業仕分け」であってほしいな、と思うのだ。