ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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Christian Duda (Text), Julia Friese (Illustration): Alle seine Entlein (Bajazzo Verlag, 2007)

今年のドイツ児童文学賞の、絵本部門にノミネートされた作品。

主人公は、キツネのKonradとアヒルのRorenz。コンラートとローレンツ、である。遊びであると同時に、内容を暗示するネーミング。
腹をすかせたキツネのコンラートが、卵を抱いているアヒルママを見つけ、タマゴを手に入れる。
しかしそのタマゴから、ひよこが生まれる。ご想像通りに「刷り込み」が生じて、ひよこはキツネになついちゃう。
キツネは、今食べるのはどうもあまりいい気分がしない、と思う。そうだ、大きくして、太らしてから食べてやろう、と思いつく。
しかし、その思いつきは、微妙な心の動きに支えられているように見える。本当に食べようと思っているのか? それとも自分への言い訳なのか? 
だって、そのあとに続く数ページで、キツネとアヒルのひよこの仲むつまじい様子がさまざまにスナップショットされるんだから。
成長してアヒルになったローレンツにガールフレンドができ、子どもが生まれ、その数が増え、森が覆いつくされる。
ずっと腹をすかせて、おなかをグーグーとならしながら、キツネのコンラートはその子たちを見守り、教育し、そして最後に年老いておだやかに死んでいく。
ヒルたちは、コンラートを埋葬し、その墓のすぐそばで、「彼の家族」は生きていくのだ。
下書きをわざと残したり、一枚の絵のなかで動きや時間を表現するためにずらした像を重ねたり、コラージュを用いたりと、イラストはさまざまな工夫をこらして、すごく楽しい、生き生きとした表現を生み出している。
なかなかいいです。気に入りました。
テキストを書いたクリスティアン・ドゥーダは、オーストリア生まれでベルリン在住の作家、演出家。エジプト系ドイツ人、のようだ。
絵はユーリア・フリーゼ。1979年生まれのイラストレーターで、現在はダブリン在住と。彼女のサイトで、作品のリストと絵が見られる。
http://www.juliafriese.com/
Susanne Janssen のやつより、こちらのほうが日本人向きかしら。