中野京子『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』(光文社新書、2008年8月)
名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)
- 作者: 中野京子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/08/12
- メディア: 新書
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この本は、そこのあたりを、「名画」をうまく使うことで、新書というコンパクトな形で楽しく説明してくれる。おもしろいです。
載っている絵それ自体は、ほとんどがそれほど僕にとって興味をそそるものではないけれど、著者の使い方、語りかたがうまい。そう、よく「ハプスブルク顔」って言うけど、絵で見せられるとなるほどと思う。63ページの『マクシミリアン一世と家族』という絵なんて、ちょっと笑っちゃう。
最後の章はマネの『マクシミリアンの処刑』(上のマクシミリアンとは別)だが、著者はけっこう批判的なタッチで解説している。それはこの本の性格から来る意図的なやり方なのだろう。この絵は、19世紀後半に「国家」というものと人々との関係が決定的に変化してしまったのだ、ということをクリアに表現している。もはや、国家を「人間」あるいは「人格」が象徴することはできない。国民の「感情移入」を介しての統治は不可能になる。そしてハプスブルク家は終焉を迎え、国民全体が顔の見えぬ「国」というものによって大量殺戮される第一次世界大戦は、もうすぐそこだ。