よしながふみ『あのひととここだけのおしゃべり』(太田出版、2007年)
- 作者: よしながふみ
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2007/10/04
- メディア: 単行本
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『あのひととここだけのおしゃべり』は活字の本、対談集だ。読むと、よしながのストーリー・テリングは彼女のマンガ的教養の深さから生まれてきて(も)いるということが、とてもよくわかる。1971年生まれだが(この本では、自分も含めてほぼすべての対談相手のプロフィールに生年が記されている。全員女性なのに。こういうのってすごく大事なことだと思う)、ベースに「24年組」からの少女マンガ(を含めたマンガ全体)を読んできた歴史がある。加えて、自分は「フェミニスト」だという。そこで言われている「フェミニズム」がどのようなものであれ、それは自分が思考(と創作)において理論的な枠組みを排除しないのだ、という宣言でもある。これを作品に感じ取り、拒否感をもつ人間もいるであろうことは、想像がつく。でも、よしながの過剰なくらいの「語り」の力は、「理論」を力ずくで「魅力」に変えてしまうのだ。登場人物たちにむかって、作者も読者も同時に「かーっ、いい男(女)だねえ!」と言っちゃうのだ。
対談相手の選び方、やまだないとや三浦しをんはそうだろうなと思うし、志村貴子もなるほどと思う(暮れに第7巻が出た『放浪息子』、おもしろい)。最後に登場する萩尾望都は、そこまでの流れから、当然。しかし驚いたのは、羽海野チカ。ふたりはどうやら大の仲良しなんだって。そう、あと、119ページで「その昔、女のお客さんたちが歌舞伎で男同士のラブシーンを観て、ぴしゃぴしゃって股間が濡れる音がしたって言うんだから。」というよしながふみの発言、これって竹熊健太郎の『篦棒な人々』の中で、石原豪人が言ってたネタと同じじゃない? 『篦棒』文庫版が出たのは『あのひとと』のあと。よしながふみ、サブカルチャー的教養もすごいのかも。