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「ブリューゲル版画の世界」展

娘がキャンプでお泊まり。この機会を捉えて仕事帰りの妻と合流、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催の「ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界」展へ。
少し早く着いたのでぶらぶらしていたら、カフェの横のギャラリーで吉田照美展をやっていたので覗いてみる。ラジオの「吉田照美のソコダイジナトコ」で、油絵をはじめてまだ数年だと言っていたけど、かなり達者な絵で驚く。お値段もン十万円で驚く。と、会場の奥の方からあのおなじみの声が聞こえてきた。ご本人である。目があったので軽く会釈。
ブリューゲル展、評判通りおもしろい。Bunkamura流に、館内の細かなしつらえ、装飾までトータルにブリューゲルでコーディネートしているところも楽しめる。ソファの柄もブリューゲル
構成も見事。あとで図録を見たら、総合監修者が森洋子だ。そしてこの図録の充実ぶりもすごい。これだけ字の多い図録は久しぶりに見た。論文や解説も読み応えがありそうだが(まだ読んでない)、なにより図版の印刷がいい。すべてがモノクロだからこそ、印刷が重要なのだ。
ブリューゲルの版画をまとめて見たのははじめてだけれど、そりゃ、おもしろいさ。予備知識なく見たって楽しいし、もちろんあとで詳しい解説を読めば、キリスト教と世俗、中世と近世、寓意と写実、大自然と小風景、月暦に象徴される民衆の暮らしと帆船に象徴される遠洋航海、まじめとおふざけ、光に包まれ復活するキリストと大股開きで穴をさらけ出す奇妙な生きもの、などなど、ブリューゲルの縦横無尽の筆さばきに唖然としつつ、さらに深みにはまること、請け合い。
請け合い、なのだが、じつはぼく自身はいま、こういう深みにはまる感じじゃないんだ。だから図録もちゃんと読んでない。時期を待つべし。
ブリューゲルといえばモブ・シーンだが、版画であることのおもしろさは、ものの輪郭が油彩に比べてくっきり際立つことである。集団のなかの個々が、細部が、浮き上がる。だから観客はおもわず画面に目を近づけて、張りつくように見入ってしまう。
目の快楽。
膨大な人物たちのなかでぼくが気に入ったのは、「野獣男ウルソン」だな。