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奥浩哉『GANTZ』はおもしろいがいたたまれない

このところ、小説を読み続けるサイクルに入っているのだ。学術書や評論などばかり読んでいた反動がきている。『ピストルズ』『火山の下』『クォンタム・ファミリーズ』『「悪」と戦う』 "Scherbenpark" ・・・。感想を書こうと思いつつ、やはり小説に関しては簡単には書けない。そうこうしているうちに『クォンタム・ファミリーズ』は三島賞を受賞。
とりあえず、マンガだ。『GANTZ 28』。

GANTZ 28 (ヤングジャンプコミックス)

GANTZ 28 (ヤングジャンプコミックス)

いよいよ大変なことになってきた。今回は徹底的に「絵」。ストーリーはほとんど進まず、破壊と殺戮の場面が続く。
すごいエネルギーだ。
引き込まれはするが、しかし、戦う人間と戦わない人間の描き方の落差がどうしても気になってしまう。強い意志を持ち、たしかな自我と意識を持った人間の顔と、目の前で生じている危機にさえ気づくことができずただ逃げ惑い殺されていく人々の顔。ノンブルがないのでページ数を示せないが、玄野の同級生たちが描かれるコマと玄野・たえちゃんの顔のコマが並んでいるところなど、あまりの差に愕然とする。
読んでいればやはり、自分は主人公たちの側に立って、思考と行動を放棄した「一般大衆」を眺めている。しかし、次の瞬間には、自分がただ殺されゆく彼らの一人だろうといやおうなく気がついて、なんとも言えず複雑な気持ちになる。
そこが微妙にいたたまれないのだ。
いろいろな意味でキビシイ作品。