ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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「建築はどこにあるの? 7つのインスタレーション」(東京国立近代美術館)

暖かな5月の日差しのなか、しかし背中にかすかな寒気を抱えて竹橋へ。
7人の建築家によるインスタレーションの展示である。
建築が、活動する人間の、世界との関係のありかたに形を与えるものだとすれば、実際に建設される造形の背後に、人間の知覚のあり方、活動のあり方についてさまざまな思考実験の積み重ねがある。
そのとき、建築家の作る模型やインスタレーションは造形芸術と限りなく重なるだろう。
ではそこで、「建築」に固有のものとは「どこにあるの」か?
例えばアトリエ・ワンによる「まちあわせ」。美術館の前庭に、竹で作られた動物様の巨大なオブジェがしつらえられている。

やはり竹でできたベンチがあり、腹の下? をくぐりぬければミュージアム・ショップの入り口だ。キリンの首のような部分は2階で建物に接続してもいる。

きわめてモダンで重厚な美術館の建物に、すっきりと伸びやかで風通し良く、かつユーモラスな構造物が連結されることで、その中にいる人間の知覚・行動のあり方もほんの少しずらされる。
内藤廣の「赤縞」(あかじま、と読む)も、人の存在によって空間がいかにたわみゆがむものか、繊細に変化するものかを、作者の言葉を借りれば「抽象的」に抽出したものだ。

赤いレーザーの光が作る縞模様の中に薄いベールを持って入り込むという仕掛け。レーザー光は形而上学的な思考を視覚化するための補助線である。
空間のゆがみ。伊東豊雄の「うちのうちのうち」は、彼によって実際に建築物として実体化されてきた・されつつあるプロジェクトの土台をなす「システム」の展示。「トポロジカルに歪んだ空間」を構成する「21世紀の建築の幾何学」(伊東)、と。
そのほか、菊地宏、鈴木了二、中山英之、中村竜治が参加している。どれもおもしろかった。
見終わってから、北の丸公園を散策。緑が目に心地よい。ほぼ5分ごとに自転車に乗った警官が通り過ぎる。のんびり過ごす家族連れの姿が、そのたびにかすかにゆらぐ。空間を歪ませる重力波