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小栗左多里&トニー・ラズロ『ダーリンの頭ン中 2』(メディアファクトリー、2010年3月)

ドイツ語に関するトピックが扱われていたので。

ダーリンの頭ン中 2

ダーリンの頭ン中 2

映画にもなったらしい、ご存じ「ダーリン」である。
トニー・ラズロさんとは昔、ある大学の講師控え室で数年間、週に一度顔を合わせていたことがある。気さくな方で、マンガのなかのダーリンとほんとに同じように、不思議な話題を常にみなに提供し、会話を楽しんでいた。ユニークな人だった。
『頭ン中』は、言葉に関する話題が中心のシリーズ。
ドイツ語が出てくるのは、「合字」の章である。ligature、ドイツ語ではLigaturってやつだ。そしてもちろん、ドイツ語の合字と言えば、"ß"ですね。エスツェット。
この文字は、いわゆる「長いs」とzが合わさったもの。Frakturで書かれた昔のドイツ語を見ると、語の頭や中ほどでは長いs、語末では今のs(「丸いs」)が使われている。
この「エスツェット」が、『頭ン中 2』では「エスゼット」と書かれている。ここはやはり、「エスツェット」として欲しかったところだ。ドイツ語の授業で学生に本を紹介しづらいものね。
エスツェットが今でも使われている理由は、直前の母音の長短を区別するのに便利だから。「この字だけが生き残っているのはなぜか」とあるんだけど、その点の指摘はなかったから、ここに記しておく。
エスツェットには大文字がないんだけれど、考えてみたらそれってけっこう不便に感じるときがある。正書法改正のときに、作っちゃえば良かったのに。
それから、キーボードのQWERTY配列の話題が取り上げられていて、この配列になったのはタイプライターのアームの動きに理由がある、と書いてある。でも、そうではない、という研究がある。興味のある人は、ネットで調べてみてください。
ラズロさんは、父親がハンガリー人で母親がイタリア人、育ったのはアメリカ、という人。
姓はLászlóだが、ハンガリー系の名前だ。画家・写真家のモホリ=ナジはファーストネームがLászló。こちらは「ラースロー」と発音するようだ。ファミリーネームとファーストネームの両方に使われる名前はヨーロッパではたくさんある。
エポニムの話とか、スプーナリズムの話もあって、なかなかおもしろかった。言葉の雑学、ね。