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サイモン・シン/エツァート・エルンスト『代替医療のトリック』(青木薫訳、新潮社、2010年1月)

肩の痛みはまだ続いているのである。まいった。
それでも最後の採点、終了。成績もつけた。ああ、やっと全部終わった。時間かかりすぎ。テスト、チューリヒについての文章中、Limmatstadtという単語が出てくるのだけれど、だれも訳せなかった。これはできなくて当たり前。独和辞典には出てないだろう。リマト川というのが流れているのだ。
さて、夜寝る前の本として読んでいた『代替医療のトリック』、読み終わった。

代替医療のトリック

代替医療のトリック

著者のひとりサイモン・シンはインド系イギリス人、1967年生まれ、ケンブリッジ大学で学び、素粒子物理学で博士号をとり、BBCでフェルマーの最終定理についてのドキュメンタリーを制作して評判を呼び、それを科学本として出版したら大ベストセラー、という人。エツァート・エルンストは1948年生まれのドイツ人で、「代替医療分野における世界初の大学教授」であると。
このような本について、その信頼性をどうやって判断すべきか、は難しい問題だ。この本の場合、サイモン・シンという著者の名前が、信頼性を担保していると思う。
鍼、ホメオパシーカイロプラクティック、ハーブ療法を取り上げて、それらが本当に治療効果を持つものなのか、「科学的根拠にもとづいて」検討したという。つまり、二重盲検法を基本とした治験のデータを集め検討したレビューをもとに執筆されているのである。
そして結論は、おおむね否定的なものだった。詳しくは本書にあたってみて欲しい。これは、広く読まれるべき本だと思う。
いやしかし、あらためて、サイモン・シンは構成が緻密でしかも読ませるな、と思う。基本的に押さえるべきことがら・前提を、具体例のあいだに絶妙のタイミングで挟み込む。
科学的な問題については、われわれはどうしても聞きかじりを「そういうものか・・・」と信じてしまう。食品、医療、「脳」、地球温暖化を含めた環境問題、などなど。大切なのは、一冊読んでやめないこと。しばらく多様な著者の本を読んでいると、だんだんと状況が見えてくる。
その際の、信頼性への判断基準としては、この本に引用されているカール・セーガンのことばを心にとめておくこと、だろうか。

二つの相矛盾する必要性のあいだで、デリケートなバランスをとらなければならないと思うのです。提示された仮説は、とことん懐疑的に吟味すること。それと同時に、新しいアイディアに対しては、大きく心を開いておくことです。(362ページ)

読んでいる本の著者が、このような科学的態度を持っているか? と問うてみる。難しいけどね・・・。