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梨屋アリエ『夏の階段』(ピュアフル文庫、2009年5月)

夏の階段 (ピュアフル文庫)

夏の階段 (ピュアフル文庫)

おやじなのだが、ありりんを読むのである。そして、おもしろく読んだのであった。
気になっていた作家ではあったのだが、読む機会がなかった。本屋でこの本が新刊で並んでいて、買って読んだのである。ピュアフル文庫は、今は「ポプラ社ピュアフル文庫」にリニューアルされている。
これはいわゆる「ヤング・アダルト、YA」小説に分類されるのだろうか。ある地方の進学校に通う高校生たちをめぐる、短編連作。
最初のが『夏の階段』。いい感じのタイトルである。夏のカイダン。空き地に残された「純粋階段」をのぼると、奥の家の窓に若い女性の顔がのぞき、この短編の主人公(1人称の視点で描かれる)の男子高校生はその姿に引きつけられる。
おお、これはホフマンの『砂男』を彷彿とさせる・・・。やはりカイダンか? というところで、やはり語られるのは高校生たちのいろいろと複雑でしんどい日常なのであった。
みなちょっとずつ「病んでいる」けれど、それは現実に適応しようとする反応でもある。それぞれの「症状」の背後にあるものを、連作という形でうまく取り出している。うまい。
文体もいい。児童文学あるいは「YA」というジャンルは、やはり文体がポイントか。
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