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野上暁『越境する児童文学 ―世紀末からゼロ年代へー』(長崎出版、2009年12月)

越境する児童文学―世紀末からゼロ年代へ

越境する児童文学―世紀末からゼロ年代へ

ドイツの「子どもの本」について、作品を読んだり研究書を読んだりはしているものの(とはいえここ数年はそれもあまり・・・)、日本の作品についてはコンスタントにフォローしているわけではない。話題のものをつまみ食い程度、というくらい。
でも、それでも、この本の著者が言う「現在では児童文学というカテゴリーそのものが揺らぎ始めている」(6ページ)という状況は、わかる。
ファンタジー系はもともと「子ども」と「大人」の垣根が低いジャンルだけれど、萩原規子や上橋菜穂子の「読まれっぷり」はやはりすごいし、あさのあつこ佐藤多佳子江國香織森絵都梨屋アリエなど、大人の本と子どもの本のあいだの壁を飛び越え、行き来して書く作家たちの作品を読めば、その自在さに驚きつつ、おもしろく読んでしまう。
それに「青い鳥文庫」に代表される作品群や、ライトノベル、ヤング・アダルトも含めれば、「児童文学」の世界はいまや混沌としているように見える(ただし「児童」向けというより「生徒」向け、ティーンズ向け、において、だろうか)。
この本は、90年代から現在までのそのような状況を、作品の具体的な内容にもたくさん触れながら、見通しよくまとめている。今後の読書計画の参考としたい。おもしろそうな作家はまだまだいるらしい。