ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

はてなダイアリーから移行。元は読書メモ、今はツイッターのログ置き場。

鈴木孝夫『日本語教のすすめ』(新潮新書、2009年10月)

日本語教のすすめ (新潮新書)

日本語教のすすめ (新潮新書)

 鈴木孝夫である。タイトルはアレだが、中身はいつもの鈴木節で、鈴木孝夫のエッセンスを入門的に知るには格好の本だ。「日本語教」の部分はいやだったら読み飛ばせばよい。
 色の話、人称代名詞と親族名称の話、漢字の話・・・。ぼくも授業でたまにそんな話題を紹介すると、学生たちはけっこうおもしろがってくれるのだ。
 ドイツ語関連で言えば、日本語の単音節は母音のみ、子音・母音、の2種類しかないのに対して、ドイツ語では23通りが可能。しかも音韻の数が日本語は23、ドイツ語は39ある。つまり単音節の単語のバリエーションは圧倒的に日本語のほうが少ない。ゆえに同音異義語が多いのだ。ドイツ語の、多くの子音をともなった単音節の単語で、初級段階で必ず教わるのがsprichstだけど、本書にはさらにうわてのpfropfst(「栓をする」、2人称単数形)が紹介されている。
 30年以上前に出された岩波新書の『ことばと文化』は現在もラインナップに入っている。ことばに関心を持ち始めた中高生がさらに言語の世界に誘われる、という本として、いまでもその魅力は失われていない。
 言語学的に厳密に考えていくとどうなんだろう、というところを超えて、ことばをめぐるわくわくを伝える力が、鈴木孝夫の語り口にはある。
 理論家というよりも、偉大なることば好き、という感じかな。