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山口昌男『学問の春 〈知と遊び〉の10講義』(平凡社新書、2009年8月)

新書479学問の春 (平凡社新書)

新書479学問の春 (平凡社新書)

 山口昌男が1997年に札幌大学に作った文化学部(はじめは学部長、のちに2002年度まで札幌大学長)で、山口が最初の学期に行った講義をもとに、構成され編集されたもの。ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』を読みつつ、山口流に縦横無尽に脱線しながら「学問」のおもしろさを伝えていく。作りも内容も、すばらしい。
 オランダのライデン学派を中心に、学問において「比較」という方法の由来やその重要性を説きながら、著者が自らたどってきた学問的来歴を交えてさまざまなトピックをわかりやすく語っている。「文化」について考えるための入門書として、この本はほんとうにお薦めだ。
 交換、遊び、原始的二元論、文化と笑い、ポトラッチ、クラ・・・。山口昌男の読者ならおなじみの言葉たちだが、語りの熱気、おもしろさがきちんと文字になっている。これは編集した人たちの力なのだろうと思う。
 編者は札幌大学文化学部の石塚純一氏と石塚千恵子氏、そしてサウダージ・ブックスの淺野卓夫氏。各講義の最後には、淺野氏が「講義ノート」として解説をつけている。
 淺野氏は東京外国語大学出版会から出た今福龍太『身体としての書物』の編集を手がけた方のようだ。山口昌男は外語大から静岡県立大学を経て札幌大学で教え、今福龍太は札幌大学から今は外語大にいる。
 我が恩師の谷川道子先生は外語大出版会を立ち上げた方である。淺野氏のこともご存じかしら。
 高校のころだったか、英語の授業でビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」を聴き、そこから先生が「異人」の話をしはじめ、話は山口昌男の『文化と両義性』へとつながっていった。ああ、学問ってこういうものなのかな、と初めて感じたのはそのときだったと思う。