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青木さん家の奥さん

 昨日、南河内万歳一座内藤裕敬作・演出・出演の芝居、『青木さん家の奥さん』を観てきた。「関東学院大学創立125周年記念」と銘打って、関東学院大学金沢八景キャンパスにある「ベンネットホール」(りっぱなホールだ)にての、1日のみの公演。出演は、内藤のほか、南河内万歳一座から河野洋一郎、鈴村貴彦、鈴木こう、花組芝居植本潤、そして松村雄基。400人ほど入るだろうか、会場はほぼ埋まっていた。
 これを観るのは、ずいぶん久しぶりだ。そしてやはりおもしろい。アドリブのようで、そうでないような気もする、5人のやりとり。今回は記念公演だから、関東学院卒業の有名人をお題としたり、学生たちが舞台に上がったりと、サービスも盛りだくさんだった。そう、あと松村雄基ファンへのサービスも、かな。そのぶん舞台の緊密度というか、構成感というか、は薄くなっていたように思うけど、楽しかった。
 酒屋の店員たちにとっての「青木さん家の奥さん」も、今日がアルバイト初日の、高校球児だった青年にとっての「最終回最終打席」や「プロ入り」も、こうであって欲しい、欲しかった「夢」であり、「幻想」である。舞台にとってのその「外部」が舞台上の人間たちを縛りつつ、しかし彼らはその束縛の中で、ありったけの想像力をふりしぼって「自由」に行動しようとする。そこでは常に上下関係、権力関係が生じ、束縛が入れ子状に発生し、かつその関係は揺れ動き、ときに逆転する。
 演じている俳優は、舞台上の配役を担っていると同時に、個々の俳優自身をさらけ出す(出さされる)。役という枠と俳優個人という枠がお互いを縛りつつ、その上下関係は揺れ動き、ときに逆転する。芝居の枠組みと演じ手の枠組みとが同じ構造を持っているところに、この芝居の肝があるように思う。
 今回は内藤さんが大活躍だった。なぜ今回の公演が実現したのか、観ていてよく伝わってきた。すてきな人だ。