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こまつ座『父と暮らせば』を観た

新宿サザンシアターにて、こまつ座『父と暮らせば』を観る。父が辻萬長、娘が栗田桃子、演出鵜山仁。
こまつ座は、これだけコンスタントに上演して、かつ毎回満員。この日も年配の方を中心に、当日券もすぐに売り切れていた。
このようにレベルの高い戯曲・舞台が定期的に上演されて、広い年齢層に楽しまれるというのは、とても良いことだ。井上ひさしは、その意味で非常に貴重な書き手だと思う。
うまいなあと思うのは、たとえば、娘の友人が被爆して亡くなる、その遺体の描写(その友人の母によるもの)で、遺体は尻の部分がぽっかりあいていて、そこに便のかけらが付いていた、と語られるところ。このフレーズでどん、とリアリティが増し、一気に「事実」の重さが押しよせてくる。観客の鼻をすする音が、このあたりから聞こえてくるようになる。
パンフレットの「こまつ座通信」のコーナーに、この戯曲のリーディングがこの4月にベルリンで行われた、とあった。2008年4月10日、ベルリン日独センターにて。『父と暮らせば』は、こまつ座から英語、ドイツ語、イタリア語、中国語、ロシア語訳が刊行されている。ドイツ語版はイゾルデ・浅井訳。タイトルはDie Tage mit Vater。