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ピーパルク・フロイゲン『北のはてのイービク』(岩波少年文庫、2008年5月)

北のはてのイービク (岩波少年文庫)

北のはてのイービク (岩波少年文庫)

 ドイツ児童文学、そしてグリム童話の研究と翻訳、日本への紹介において大きな仕事をなさっている野村泫先生の最新刊は、スウェーデンの子どもの本、ピーパルク・フロイゲン『北のはてのイービク』。(かつての)グリーンランドエスキモーの少年を主人公とする、1945年に出版された、素朴だが力強い物語だ。
 訳者解説によれば、作者フロイゲン(1918ー99)はデンマークの極地探検家の父と、グリーンランド出身のエスキモーの母との間に生まれた。ある時期までのエスキモーの生活の一片を描けたのは、その出自ゆえなのだろう。彼らのコミュニケーションのあり方はとてもユニークで興味深いが、それがこの物語の骨格を支えてもいる。
 1960年代生まれならば、植村直己の『極北に駆ける』や『北極圏一万二千キロ』を思い出すのではないだろうか。この本、読み終わって、小学生の自分が学校の図書室で読んでいるというイメージが浮かんできた。そういうタイプの本だと思う。知識と物語が、読んだ子の深くしっかりと根付き、財産となる。
 恩師と言うのもはばかられる、野村先生。スウェーデン語もおできになるのか!