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小林信彦『映画×東京 とっておき雑学ノート』(文藝春秋、2008年4月)

映画×東京とっておき雑学ノート―本音を申せば

映画×東京とっておき雑学ノート―本音を申せば

 この本を買って、さて、と本屋を出たところで、友人にばったり会う。基本的に「よそ」で「よそいき」の顔してしか会ってなかった人と、地元で無防備なところに声をかけられると、もちろん会えてうれしいんだけど、どぎまぎしてしまう。受け答えがぎくしゃくしてしまうのが情けない…。
 週刊文春に連載されている「本音を申せば」シリーズの10冊目。1年に1冊、今回は2007年分をまとめたもの。こういう時事的エッセイはリアルタイムで読みたいんだけど、毎週「文春」を買うのもちょっと。高島俊男の「お言葉ですが…」もだいぶ前に終わってしまったしなあ。
 小林信彦ファンとして、このシリーズも最初から愛読。社会学者が時代を切り取るのとはまた別のやり方で、作家はその時代を観察し文字に定着するわけだけれど、現在長期にわたってなされている数少ないそんな定点観測のなかで、信頼を置いているもののひとつ。
 だってね、人はけっこう昔のことなんて忘れちゃって、目の前の現象を見てそのかぎりであれこれ言うばかりってことが多いけれど、小林信彦は記憶の人で、今のこれはあのときのあれと同じだろう、ときちんと指摘してくれるんだもの。敗戦後、朝鮮戦争後の流行語「逆コース」と安部の「戦後レジームからの脱却」の類似性。「女性は産む機械」=「産めよ増やせよ」や「美しい国」=「花咲く祖国」(ともに後者は戦争中の用語。東京という都市の変化、町から消えてゆくモノ、あるいはそもそも町自体が消えてゆくこと。
 今度のタイトルはちょっと韜晦が入っているが、今回も映画やエンタテインメントの世界を楽しげに語っている。いつもながらおもしろい。小林信彦って長澤まさみ堀北真希が好きなんだけど、僕もおんなじなので、よけいに信頼感が増すのだ。そう、昨年は植木等が亡くなった。その話もとうぜん入っている。
 本屋に『定本 日本の喜劇人』2冊セット、があった。1万円近くするやつ。入ってるものはたいていもってるし、どうしよう?