ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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古本屋で買った昔の「太陽」2冊。

 町田の高原書店で見つけたもの。
  ・平凡社「太陽」1979年3月号 特集:絵本
  ・平凡社「別冊太陽」1984年春号 日本のこころ45 絵本

 前者は日本中心、明治・大正・昭和と区分けして、それぞれの時代の代表的な絵本、特に絵雑誌を図版入りで紹介している。明治37年刊行のカラー刷り雑誌「お伽絵解こども」から始まって、巌谷小波の「幼年画報」(明治39年、博文館)、宮武外骨の「ハート」、そして通称「赤本絵本」と呼ばれるもの。明治20年に出版されたヴィルヘルム・ブッシュの『マックスとモーリッツ』翻訳が図版入りで紹介されているのが貴重! これはかの羅馬字会の発行で、もちろんローマ字でつづられている。タイトルは『WANPAKU MONOGATARI』。『腕白物語』だ。渋谷新次郎訳。
 子供向け絵雑誌と言えばなんといっても大正時代だ。まず、婦人之友社羽仁もと子の手になる「子供之友」(大正3年)。そしてメインが大正11年創刊の「コドモノクニ」(東京社)。絵画主任として岡本帰一、顧問に倉橋惣三、北原白秋、野口雨情、中山晋平、というメンバー。すごい。ここを舞台に、清水良雄、武井武雄初山滋、川上四郎ら当時を代表する画家たちが腕をふるう。モダン!
 昭和は「キンダーブック」。フレーベル館発行、昭和2年より。出版元からわかるとおり、これは「コドモノクニ」の芸術志向とは対照的に教育目的からの出版だ。それから、大御所登場、講談社の絵本。
 大正と昭和で絵の雰囲気が大きく変わっていくことに、改めて驚かされる。今、「昔の(古くさい)絵本」と聞いてイメージする絵柄は、妙にリアリスティックな昭和のものだろう。大正時代の芸術志向、センチメンタルさといったものは、昭和初期の「リアル」な世相によって排除されていく、と言えるだろうか。そしてそんなリアルが戦後になって山川惣治小松崎茂で大爆発する、と。
 あとは紙芝居(唐十郎が紙芝居についてエッセイを寄せている)、小学一年の教科書の100年の歴史が特集されている。この頃の「太陽」の編集長は祐乗坊英昭、つまり嵐山光三郎でR。古いか。
 後者は別冊ということで、まるまる絵本作家たちの紹介で占められている。個々の画家についてもう少し詳しく知りたければ、飯沢匡三木卓の解説つきのこの本を眺める、と。1979年のになかったのでは、やっぱり村山知義がおもしろい。あと、こちらは外国の画家たちも紹介されている。ハインリッヒ・ホフマンから、グリーナウェイ、コルデコット、クレーン、ラッカム、クライドルフ、モンベル、ポター、ロックウェルなどなど。構成・解説は安野光雅だ。
 しかし、「赤い鳥」にしても童謡運動にしても、大正の童画家たちにしても、徹底的に「男」だ。しかもセンチメンタルで、西洋のモダンをその身いっぱいに浴びて。そして以降の歴史を知る現在から見るからか、どことなくもの悲しく・ペシミスティックにも感じられる。それが昭和になってソボクな絵柄に取って代わられる、その流れはやはり再確認しておくべき点だろう。