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令丈ヒロ子『若おかみは小学生!』(講談社青い鳥文庫、2003年)

 子供の本の売り場をぶらぶらしていて、ふと手にとって買ってしまい、喫茶店で読む。カバーを掛けてもらわなかったのでちょっと恥ずかしく、表紙カバーを外して読んだ。令丈ヒロ子の評判は知っていたし、このシリーズが特設コーナーとして1巻から最新11巻までずらりと並んでいたことからも、よく読まれている作家だとわかる。100万部を超えているとか。数年前に、南河内万歳一座の座長、内藤裕敬さんがお父さん役で出ていたNHKのドラマ『料理少年Kタロー』の原作がこの作家だった。その『料理少年』も青い鳥文庫(今はラインナップから落ちているようだ。表紙イラストがいしかわじゅん)。1990年デビューだから、もうベテランだ。

若おかみは小学生! 花の湯温泉ストーリー(1) (講談社青い鳥文庫)

若おかみは小学生! 花の湯温泉ストーリー(1) (講談社青い鳥文庫)

 青い鳥文庫だけど、この10年ほどは「書き下ろし」がメインになっている。創刊が1980年で、最初は講談社の児童向けの本の廉価版という位置づけだった。手元にある一番古いのはディーター・グリム『こわがりやのおばけ』(関楠生訳)で、1984年刊だが、挟まっていた既刊案内には松谷みよ子佐藤さとるワイルダームーミンなどなどが並んでいる。「世界の名作」。しかし現在は、もちろんそういうのもまだ刊行されてはいるが、売れ線はあきらかに書き下ろしだ。小中学生に向けて描かれたライトノベル、とでも言ったらいいのか。今子どもたちに読まれている「児童文学作家」たちは、こういう場所にいるんだ。あさのあつこ森絵都なども、たぶんこのあたりから登場してきたはず。
 『若おかみ・・・』、小さな旅館を舞台にしたユーモア小説シリーズ、なのだが、小学6年生の主人公、いきなり両親が交通事故で死んでしまう。旅館をやっている祖母のもとに引き取られるが、そこに男の子の幽霊が出てきて・・・と、最初の10ページでものすごい展開。この語り口はマンガのものだろうし、このスピード感と単純さが、このタイプの作品が人気のある理由なのだろう。けっこうおもしろい。そりゃあ、読みはじめにある程度の「ガマン」が必要な作品へとさらに読書の幅を広げていってくれるといいなあ、とも思うのだけど。