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「文藝」冬号と「ミステリマガジン」11月号

千円ほどの雑誌ふたつをせっかく買ったのだから頭からこつこつ読んでいこう、「文藝」には多和田葉子中原昌也笙野頼子の小説も出ているし、でも「ミステリマガジン」はどれも連載で途中からミステリ読むのはキビシイ。
「文藝」の「これだけは読んでおきたいブックガイド2010」、日本文学編・海外文学編ともいまひとつ印象に残らず、それは語る人のせいなのかそれとも列挙形式ではそんなものなのかわからない、だが哲学・思想編は千葉雅也と月曜社の小林浩(「ウラゲツ・ブログ」は出版情報の大事な情報源)が担当で、これはちょっとスリリングなところがあった。『世界史の構造』の柄谷行人と『カイエ・ソバージュ』の中沢新一の近接性とか。なるほど確かに。円の暴落とインフレと経済の崩壊が迫りつつある?という状況のなかで、理想と革命を語り続けることには恐らく大きな意味がある。ような気がする。あと、ヴィジュアルブック編、ABCで店員さんにガイドされたら、やっぱりいろいろ買っちゃうだろうな。楽しいお買い物。
「ミステリマガジン」を買ったのは、千野帽子の連載「幻談の骨法」がE.T.A.ホフマンを取り上げていたから。テーマは「人外との恋愛」。

この連載は幻談の主題よりも構造を重視するから、ここで語りの構造に視線を移そう。人外との恋をあつかったロマン派の文学作品で、構造の点でひときわ目を引くのが、E.T.A.ホフマンの『黄金の壺 新しい時代のメールヒェン』(一八一四)である。(P.81)

ホフマンと「語りの構造」をテーマにかつて修士論文を書いたわたしとしては、立ち読みで済ますわけにはいかなかったのである。
同時に扱われているノディエ『パン屑の妖精』ともども、メタフィジックなファンタジーであるとして、その「構成の緩さ」が逆に両者の武器となっている、と。
「現世でのダメ男が、なんの理由もなく異世界の美女に見初められる設定」 (P.82)を持つファンタジー・・・なるほど、アンゼルムスはひょっとしたら諸星あたる、なのかも! 『黄金の壺』と『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』におけるメタフィクションの構造、なんて論文が書けるかしらね。