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森薫『乙嫁語り 1』(エンターブレイン、2009年10月)

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)

前作『エマ』ではイギリス・エリザベス朝を描いた森薫が、こんどは中央アジア、テュルクの人びとを題材に、例によって衣装や装飾品などを緻密に、こまかーく描いている。
テュルクは、トルコ共和国の「トルコ」であり、また言語学では「チュルク」とも表記される。
『エマ』では、愛をかきたて物語を駆動する原動力として「階級差」を使っていたが(けっこうストーリーは陳腐なのだ)、こんどは「年齢差」(と、たぶん定住民と遊牧民の差)だ。12歳の男の子と、20歳のおねえさんの結婚、と。物語推進力としてはそう強くない設定なので、今後どう展開していくのか。楽しみである。掲載誌(「Fellows!」)が隔月刊なので、2巻は1年後になりそうだけれど。
もちろん緻密な描きこみを眺めるのも楽しいが、それだけではつまらない。お話しも楽しみたい。
対象にのめり込む力のすごさは、時として視野の狭さに通じる危険がある。『エマ』では、もっと大きな歴史の流れに対する知識があれば、と思うところがなきにしもあらずだった。
西洋人の「居候」がいて、生活調査活動をしているのがおもしろい。民族学者だろう。名前がスミスだから、イギリス人か。