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シュトゥットガルトのクラインガルテン

 NHK教育テレビで、「趣味の園芸 やさいの時間」(ヒデキが畑を作って野菜を植えている番組、講師は藤田智、へんな先生)と「趣味の園芸 ビギナーズ」という番組がある。そのテキスト11月号に、「キッチンガーデン探訪」というコーナーがあって、今回は「ドイツ・シュトゥットガルト編Part 1 ガルテンフロインデ・ツフテンハウゼン」。
 66歳のカールさん、72歳のアンネマリアさんのザウアー夫妻が借りている、400平米のクラインガルテンが6ページにわたって紹介されている。夫妻はもう30年以上、菜園づくりを楽しんでいるのだそう。
 日本で「クラインガルテン」というと週末に訪れる滞在型の農園を指すが、ドイツではラウベ(小屋)がある場合でも宿泊はできないなど、「クラインガルテン法」についての簡単な紹介がある。市の公園という位置づけであり、街の緑化という役割もある、と。
 「Part 1」ということなので、次号以降も続くのだろう。
 取材者、協力者などが記されたクレジットに「通訳 松田雅央」とある。この方の著書を一冊持っている。『環境先進国ドイツの今 緑とトラムの街カールスルーエから』(学芸出版社、2004年12月)。

環境先進国ドイツの今―緑とトラムの街カールスルーエから

環境先進国ドイツの今―緑とトラムの街カールスルーエから

 CHAPTER 1 緑豊かな街づくり
       1 街の緑化 2 屋上・壁面緑化 3 ビオトープ 4 クラインガルテン
 CHAPTER 2 人に優しい都市交通
       1 トラムが支える地域交通 2 カーシェアリング
       3 第3の交通手段としての自転車
 CHAPTER 3 ゴミの賢いリサイクル
       1 家庭ゴミの分別 2 コンポスト 3 ゴミ処理とバイオマス利用
 CHAPTER 4 日常生活に溶け込む自然エネルギー
       1 地域のエネルギー供給 2 ゴミの山の風力発電
       3 太陽エネルギーの利用 4 ドイツの水力発電事情
 CHAPTER 5 エコロジーライフ
       1 エコショップとビオ農業 2 ゲロルズエッカー・エコロジー住宅地
       3 環境教育        4 ドイツ人の環境意識

 著者の住むカールスルーエにおける環境政策について、データをきちんとあげながら、わかりやすくまとめてある。「ドイツすごい!」的な素朴な本も多いけれど、実情に即した客観的な記述に信頼感がある。参考文献も充実している。授業のネタ本のひとつなのである。
 クラインガルテンについても、詳しい紹介がある。300平米借りているミュラーさんの場合、借りるための費用は年に100ユーロほど。しかし新しく借りるに際しては、区画のなかにある設備(ラウベや柵、水道など)を前所有者から買い取る必要があり、ミュラーさんの借りているクラインガルテンの評価額は3,000ユーロほど。「現代のクラインガルテンは決して貧しい人の庭ではない」と著者は言う。
 興味深かった一節を。

ドイツで言われる「自然環境」と日本のそれは同じではないので、環境問題についてドイツを引き合いに出すときは注意が必要だ。一口に「自然」といっても、ドイツで求められるのは、得てして人間によって制御された自然。庭園、河川管理、自然復元、ビオトープなどにもその傾向が強く感じられる。スケールの大きな自然や、人間が制御できない自然の力を感覚的に理解できないドイツ人は少なくない。(205ページ)

 これをきちんと指摘してある「環境本」は意外と少ない。本書に信頼が置ける理由のひとつである。