ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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インフルエンザと演劇

 最近の豚インフル騒ぎで1918年の「スペイン風邪」のことがたびたび言及されているが、芸術座主宰の島村抱月が亡くなったのも、このスペイン風邪によってである。11月5日のこと。大正7年だ。
 芸術座の中心俳優だった松井須磨子は、『カルメン』で主役を演じていた最中の1月5日、劇団の建物の中で首をつる。抱月の命日である。ふたりは結婚はしていなかったが、一緒に暮らしていたのだった。
 松井須磨子トルストイ『復活』のカチューシャを演じたときに、劇中歌として歌った『カチューシャの唄』は当時の大流行歌となる。兵藤裕己『演じられた近代』によると、「ヨナ抜き音階の唱歌風に、ドイツ・リードふうのメロディをとり入れた」ものだという。大正3年(1914年)のこと。「近代流行歌史の最初のヒット曲」、と(229ページ)。