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飯沢耕太郎『写真を愉しむ』(岩波新書、2007年11月)を読んだ

 タイトル通り、写真のさまざまな楽しみ方のガイド。写真というメディアについて、時代・分野ともに幅広く解説、紹介することにかけては第一人者である飯沢耕太郎による、実践的手引き書だ。同じ岩波新書多木浩二『ヌード写真』とか『肖像写真』を読めば知的な関心は喚起されるけれど、たとえばオリジナルプリントが欲しいな、とはならない(と思う)。でもこの本を読んだら、写真集を集めたくなり、写真展に行きたくなり、作家のプリントを家に飾りたくなる。これで田中長徳の本を読んでカメラが欲しくなってたら、もうたいへんだ。
 ちょうど2年前に東京国立近代美術館で開催された「ドイツ写真の現在」展は、「アウグスト・ザンダー」展と併催で、おもしろかった。ベルント&ヒラ・ベッヒャーの「タイポロジー」とザンダーを同時に見れば、やっぱり強く惹きつけられ、圧倒される。たしかトーマス・ルフやトーマス・シュトゥルートはなかったが、グルスキーやティルマンスは見ることができて、写真は(写真も)サイズというものが大きな意味を持っているんだな、とあたりまえのことを改めて実感した。絵画は「本物」がひとつあって、画集はそのリサイズした代替物だということが明確に意識されるけれど、写真は「写真集」それ自体が「作品」でもあり、しかし一方でオリジナル・プリントがあり、いや、フィルム(デジタルならデータ)からその時々でいかようにも異なるサイズのプリントを作成できるわけだから、まるでグーグル・アースで縮尺を変えながら遊ぶみたいな変幻自在性を潜在的に持っているメディアなのだ。

写真を愉しむ (岩波新書)

写真を愉しむ (岩波新書)