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南河内万歳一座・内藤裕敬プロデュース「青木さん家の奥さん」

ドイツ語に、Schadenfreude シャーデンフロイデ、という言葉がある。ひとの不幸や困っているさまをみて喜びを覚える、というような意味だ。
「青木さん家の奥さん」は、メタな構造を持つ骨格それ自体の魅力と、個々の役者の魅力の双方がストレートに味わえる希有な芝居なのだが、今回は前者よりも後者のほうにより大きな比重が置かれていた、ように思えた。
ある酒屋の、4人の店員。掛け合いと、着想のエスカレーション。その中で、「お題」を受けてのとっさのアドリブ。コントロールするのは戯曲の作者かつ店員のひとりである内藤裕敬、ではあっても、それぞれが身もだえしながら必死に言葉をひねりだし、舞台を進行させねばならない。
それを笑いながら、ときにはらはらしながら、そして時に、いじめを傍観している人間の気まずさなども感じつつ、観客は舞台に見入る。そのように緊張と弛緩を強いられるからこそ、最後の「反転」と「許し」に観るものは息をのむのだ。
で、今日のは少し、シャーデンフロイデを多めに味わったな、という感じだったの。その分、クライマックスの部分は端折られたかな。それもまた良し、という感想は、「青木さん」通、的な観客のものだろうか。
上演時間は2時間と少し。しかし時間はあっというまに過ぎた。出演は新人バイト君が鈴村貴彦、店員がヨーロッパ企画永野宗典と男肉 du Soleilの池浦さだ夢、南河内内藤裕敬、荒谷清水。
冒頭、歌いながら通路から登場した荒谷さんにいきなり抱きしめられたのは、私です。