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安藤聡『英国庭園を読む』(彩流社、2011年11月)

英国庭園を読む: 庭をめぐる文学と文化史

英国庭園を読む: 庭をめぐる文学と文化史

副題が「庭を巡る文学と文化史」。「英国庭園」あるいは「イングランド式庭園」と呼ばれるもののありようを中世・ルネサンスの時期から現代までたどるのだが、そこではおのずと、背景をなす英国文化の姿が浮き彫りになるという仕掛け。同時に詩や小説を絡めることで「庭を巡る文学史」としても仕立てられている。というか、そもそも「庭園」は芸術なり文学なりと切っても切れぬ関係であることが、読み終われば納得されるのだ。
ぼくは特に庭園や「イングリッシュ・ガーデン」そのものに大きな関心があるわけではない。しかし18世紀から19世紀にかけてのヨーロッパ文化史においてたとえば「ピクチャレスク」なり「風景庭園」を考えることは欠かせないし、アーツ・アンド・クラフツ運動がこだわった「職人技」と自然、植物はクライドルフなどの絵本を生み出す背景として重要だ。
著者は児童文学に関する本も書いていて、本書にも子どもの本が登場する。フィリッパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』、バーネット『秘密の花園』、そして『ハリー・ポッター』などなど。作品の中で庭を描くことは、その著者なり登場人物なりの世界観を語ることと同義である。だからこそ、文化を巡って庭園を見ていくことはおもしろい。
英国文化と風景、庭との関わりに関しては、20年ほど前の、川崎寿彦による一連の著作がある。いくつか持っている(読んだ)はず。探してみよう。
そういえば、庭園と言えばフランス式とイングランド式であって、ではドイツの庭園はどういう性格を持っているのだろう。日比谷公園が「ドイツ式庭園」であると聞いたことがあるけれど、どうだったか。良い参考書はないかしら。