ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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Bunkamuraでフェルメール

ドイツ・フランクフルトのシュテーデル美術館所蔵の作品たちが、美術館の改装にともなって来日。目玉はフェルメールの「地理学者」である。
フランクフルトの中央駅から出てバーゼラー通りを右に行くとすぐにマイン川に出る。そこの大きな橋(フリーデン橋)のほぼ袂にあるアパートに1年間住んでいた。その橋はなんとも殺風景なので渡らず、川沿いのウンターマインカイ通りを少し歩いてホルバインシュテーク(シュテークは歩行者用の小橋)を渡ると、シュテーデルの前に出る。
非社交的人間ゆえの孤独と暇がつのると、ふらりとシュテーデルに行ってぼんやりと過ごしていたのだ。
しかし、フェルメールを観た記憶がないのである。
当時は造形美術に関する知識も感性もなかったのだ。恥ずかしながら。それと、オランダの風景画がたくさんあって、そのあたりはすっ飛ばしていた。
18・19世紀以降のものか、15世紀あたりの宗教画・神話画ばかりを観ていた。
ボッティチェリの女性像とかファン・アイクの「ルッカの聖母」とか、クラナッハのビーナスとか。新しいところではベックマンなどたくさんあった。
そう、なぜかクールベの「波」をぼおっと観ていたな。
オランダの風景画で言えば、やはりロイスダールがたくさんあって、なかでも「街灯のあるハールレムの冬」は印象に残っている。これは今回の展覧会でも来ているのだ。冬のどんよりとした雲で覆われた空、うっすらと積もる雪、葉を落とした木が画面の両側から中心へ向かってたわみつつ、その中央に街灯がすっくと一本たっている。街灯の少し先には人が二人、画面の向こうへと歩んでいる。
寂しい。しかし絶望ではない。ふしぎな暖かみがある。
今回の展覧会、観るべきものはけっこう来ていると思う。ルーラント・サーフェレイ「音楽で動物を魅了するオルフェウス」、父ブリューゲルの「嘲笑されるラトナ」、レンブラント・ファン・レイン「マールトヘン・ファン・ビルダーベークの肖像」、ヘラルト・テル・ボルヒ「ワイングラスを持つ婦人」などなど。
4月に渋谷でのお仕事が始まったら、また観に行ってみよう。