ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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観たが観たうちに入らない

 大学の教員懇親会で横浜中華街のあとすぐ近くの神奈川芸術劇場で観劇という一日、たしかいつもは立食形式だったなと思いそれならぱくぱく食べてしまおうと、思っていたところが今回は着座のコース料理。Y先生とゆっくりお話しできたのは良かったが。メインが出ぬうちに中座して劇場へ。
 「世界の小劇場vol.1」のうち、今回はリミニ・プロトコルの『ブラック・タイ』。
 しかし今回は具体的な感想・分析を書くのを控えたい。なぜかといえば、3分の1ほど眠ってしまったからだ。抗不安薬を飲んだせいである。
 韓国で生まれてすぐにドイツで養子として育った女性の、ほぼモノローグ。トレイラーではドイツ語だったが、英語だった。さまざまな仕掛けを駆使して、よくこれだけの緻密な、しかしエンターテインメントもちりばめた舞台が作れるものだと感心。ひとりの人間とはいかに重なり合い錯綜する層から成り立っているかを、それこそDNAから国際政治まで、外連味なく暴き出していく。しかもそれを深刻ぶらずユーモラスに、しかし真摯にやってのけるのだ。けれどその仕掛けや工夫、魅力的な主演女性の語りを味わおうという前に、頭が働かないのだった。
 隣にたまたま知り合いが座っていて、やあやあと挨拶などしたのだったし、結構前の方にすわってもいたので舞台からもだらしなく寝ているのが見えてしまっただろうし、情けなく恥ずかしく申し訳ない。
 おそろしくレベルの高い舞台だということは、わかった。なんというか、甘えがない。媚びがない。クールに超然しつつ、ユーモアを忘れない。リミニを生で見たのは今回が初めてだが、過去の演目を眺めても、よくいろいろと魅力的なアイディアを思いつくものだ。しかもそれを舞台化する思考力と力業。なるほど評価の高いのもわかる。
 ただ、いわゆる「ドキュメンタリー演劇」とは、ぼくはあまり相性が良くないかもしれない。その知的なキレイさと「ドキュメンタリー」との齟齬? ロハスとかエコとかと同質の何かを感じる? そういうことでもないのかなあ。いまのところ、よくわからない。まあゆっくり考えよう。
いっしょに行ったG大の学生さんも舞台を楽しんだようで、良かった。
ところで、テレビで清水邦夫作の舞台『楽屋 流れさるものはやがてなつかしき』を観たのだが、やはり清水邦夫は面白い。演出は生瀬勝久。登場する4人の女優(小泉今日子蒼井優村岡希美渡辺えり)もそれぞれ個性的だが、蒼井優がすごく良いのに驚いた。単なるかわいくてきれいなものではまったくないのだった。