ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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マンガとその周辺

ほっこりとした雪ならばあまり寒さを感じないのだけれど、水っぽいこんな雪の日はじわりと冷える、ような気がする。熱を出してそれが引いたばかりの娘は、外に出て雪と遊ぶのを止められてふてくされる。気持ちはよくわかるけれどね。
放浪息子』がアニメ化された志村貴子の、昔の作品『ラブ・バズ』が新装版としてエンターブレインから復活。まずは第1巻。

ラヴ・バズ 新装版 1 (ビームコミックス)

ラヴ・バズ 新装版 1 (ビームコミックス)

この作品もそうだけれど、志村貴子の絵は、ほとんどのコマが上半身か顔で占められている。背景はあっさりと、あるいはほとんど描かれない。
そういう寄りの構図ばかりなのに、そして描かれるのはプロレスのジムや学校といった狭い世界であるのに、意外なほど開かれた印象を受けるのだ。登場人物はたくさんいても、たいてい画面は誰かと誰かの一対一。集団の狭苦しさを感じさせない。
フジのアニメ枠「ノイタミナ」で今やっている『放浪息子』が、原作と比べてうんと集団の狭さ、小さなグループ内でのこじんまりさ、を感じさせる(ように僕には思える)のは、アニメの方は引きの構図が多いからなのではないか。おそらくは意図的なものなのだろう、画面に花びらが舞ったりするのと同様に。
『ラブ・バズ』は女子プロレスの世界、『放浪息子』は女の子になりたい男の子をめぐる話、そしてbassoの『アルとネーリとその周辺』(茜新社、2011年2月)はイタリアの男たち=ゲイの話。
アルとネーリとその周辺 (EDGE COMIX)

アルとネーリとその周辺 (EDGE COMIX)

イタリアの政治家アルと恋人のネーリ。老眼鏡の上目遣い萌えとか、インテリ政治家萌えとか。これを読めば、元宮崎県知事の老眼鏡上目遣いの気色悪さを中和してくれるか?
絵柄は志村貴子とまったく異なるけれど、背景なしで表情のアップを連ねる構図はよく似ている。このあたりになにか秘密があるように思うが、まあいいや。
登場人物ほぼひとり、描きこみたくさん、というのが原作久住昌之・漫画水沢悦子の『花のズボラ飯』(秋田書店、2011年1月)。
花のズボラ飯

花のズボラ飯

孤独のグルメ』をロリ絵で描いて主人公は夫単身赴任中の妻、というアクロバティックがこれほどおもしろいとは。
童顔の30歳、結婚しているがひとり暮らし、的な「妻」がひたすら脱力系な独り言をたれ流しつつ「はふーん」とものを食う、というマンガをみんなけっこう「おもしろい」と言っているのは、「原作 久住昌之」というクレジットのおかげ、なのでは、とも思うけれども。
そして、河出書房新社の「KAWADE夢ムック 文藝別冊 総特集 ちばてつや マンガ家生活55周年記念号」。これは作り手も、そして寄稿しているマンガ家その他の方々も、ちばてつやに対して愛と尊敬の気持ちをあふれんばかりに抱いていることが伝わってくる、気持ちの良いムックだった。
ちばてつや--漫画家生活55周年記念号(文藝別冊)

ちばてつや--漫画家生活55周年記念号(文藝別冊)

ぼくが少年マンガを始めてじっくり読んだのは、ちばてつやの『おれは鉄平』だったのだ。いくど読み返したことか。『のたり松太郎』も『あした天気になあれ』も、大好き。
掲載されている『家路 1945〜2003』は、ちばの満州からの引き揚げ体験を描いたもの。これを読むためだけでも、このムックを買うべきだと思う。