ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

はてなダイアリーから移行。元は読書メモ、今はツイッターのログ置き場。

梨屋アリエ『プラネタリウムの後で』(講談社文庫、2010年12月)

プラネタリウムのあとで (講談社文庫)

プラネタリウムのあとで (講談社文庫)

さっきニュースを見ていたら、探査機「はやぶさ」の影響でプラネタリウムが大はやり、と。
プラネタリウムと言えば、と思い出して、買ってあった梨屋アリエの『プラネタリウムのあとで』を読む。5年前の作品が文庫になったところ。
前作『プラネタリウム』と同様に、さまざまな少年少女的屈託を抱えた若者たちのお話しである。
その屈託は、「比喩」を「現実」に変換するという手法で表現される。
自分の気持ちを抑えつけ気味の少女が心に感じる辛さ、重さが小石となってころんと落ちる。自分でも制御できずもてあます自我を持つ家庭内暴力少年の身体が巨大化する。家族から見放された少女の過食症・拒食症は、「吸血鬼」ならぬ「吸脂鬼」による脂肪吸引となって現れる。悲しみ・境遇の共有が、少女が脱皮した皮を少年が食べる描写となる。
作者がやっているのは、思春期の少年少女の揺れるあれこれに解答を用意したり進むべき道を示したりすることではなく、それをただすくい取って、小説という言葉の綾織りの中にやさしくくるみこむことだ。
それが梨屋アリエの特質でもあるし、このジャンルの培ってきたひとつのスタイルでもあるのだろう。
一話一話、ふっ、という感じで終わるのが、良いのだ。