ホンダヨンダメモ(はてなダイアリー版)

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11月後半のマンガたち

黒田硫黄『あたらしい朝 2』(講談社、2010年11月)

あたらしい朝(2)<完> (アフタヌーンKC)

あたらしい朝(2)<完> (アフタヌーンKC)

第二次世界大戦前夜のドイツ、当局の闇資金らしき大金7万5千マルクを拾った青年ふたり、マックスとエリック。ほとぼりを冷ますためにその金をパン屋の娘に預けて海軍へ。志願すれば招集されるより兵役は短くて済む、と思いきや戦争であるからしてそうは問屋が卸さない、思惑はずれて数年過ぎ、マックスは通商破壊船たる仮装巡洋艦トールに乗って横浜へ、いろいろあって箱根の温泉宿で終戦を迎え・・・というようなお話。
ドイツもの、戦争ものだがこの2巻の舞台は横浜と箱根である。マックスの希望はドイツに残してきた大金とパン屋の娘ベルタ。
マックスは結局最後まで、「ここにないもの、いないもの」を希望として生きていく。希望が失われて迎える朝より、永遠に実現せぬ希望を抱いたままにペンディングされた昨日のほうが「生」は充実しているのだ。そのアイロニカルな結末に、しかし強烈なリアリティがある。

荒川弘鋼の錬金術師 27』(スクウェア・エニックス、2010年11月)

鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)

鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)

完結。きれいにまとめて終わった。暴力や悪や死がストーリーを推進する物語をエンターテインメントとして子ども向けに描いたということに対して、作者は誠実に責任を取ろうとしている。冗長になるのを恐れずに後日譚を少し詳しく描いているのも、そういうことだろう。その倫理観は好感が持てる。
本編のラスト、蒸気機関車に引かれた列車で旅立つ主人公、プロポーズ、ウィンリィちゃんの「じっとしてる男なんてつまんないじゃない」というセリフ。もうたいへんに泥臭く、古くさい。そこがこの作品の魅力なのだな。
そうそう、このブログでこのところ取り上げている「機械と人間」「人造人間」的なテーマでこの作品を語るとおもしろいかも。

羽海野チカ3月のライオン 5』(白泉社、2010年12月)

3月のライオン 5 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 5 (ヤングアニマルコミックス)

これほどネガティブな要素を背負いまくった少年が主人公で、しかも題材がプロの将棋界、というマンガに、こんなに引き込まれるというのは、魔法のようだ。
和菓子屋の三人姉妹、東京の川っぺり、勝負の世界。棋士という少数の人間による濃密な空間。なるほど、よく見れば納得の道具立てである。みな驚いたであろう48章の扉の絵は、そんな世界観をよくあらわしている。
少年が「大人」の世界に混じることのできる舞台装置として、将棋界を見つけた、その目の付け所がすごい。
そういえば数年前のドイツ語講読の授業で、なぜか『はちみつとクローバー』について学生と熱く語り合ってしまったのを思い出した。あのときの学生たちは元気だろうか。

あずまきよひこよつばと! 10』(アスキー・メディアワークス、2010年11月)

よつばと! 10 (電撃コミックス)

よつばと! 10 (電撃コミックス)

こんかいはいつにもましてなにもおこらないのだ。そしてそれがここちよい。でんきやさんでびでおうりばにいくと、あれやっちゃうよな。

まだあるけど、続きはまた。