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ノーベル文学賞はHerta Müller

 すでにご存じのことと思うけれど、今年のノーベル文学賞をドイツの作家ヘルタ・ミュラーが受賞した。ドイツ人作家としては、ギュンター・グラス以来10年ぶりのこと。2004年にオーストリアのイェリネクが受賞しているから、ここ10年で3人、ドイツ語で書く作家が選ばれたことになるし、イェリネク、ミュラーと女性作家が続いた。
 ヘルタ・ミュラーは読んでいないのだ。邦訳は『狙われたキツネ』(Der Fuchs war damals schon der Jäger,1992)が三修社から1997年に出ているが、今は絶版か。すぐに再刊されるだろう。
 56歳。ノーベル賞受賞者としては若いのではないか。ルーマニアのドイツ語話者として生まれ、チャウシェスク政権下で1987年まで過ごしたのち、西ドイツに移る。最初の小説は1982年。東北大学の藤田恭子氏によれば、ミュラーは「ルーマニア・ドイツ語文学」、つまりルーマニアのマイノリティとしてのドイツ語話者(母語)による、ドイツ語で書かれた文学、の作家である。
http://www.intcul.tohoku.ac.jp/cms/files/kiboko_fujita.pdf
ルーマニア・ドイツ語文学」のなかで一番有名なのはパウル・ツェランだろう。
 ヘルタ・ミュラーの作品は、東欧の国におけるマイノリティとしての体験をモチーフにしたもの、と。今年2009年は、社会主義国家としての東欧諸国が崩壊した年、「壁が崩れた」年である1989年からちょうど20年目なのである。過去を振り返るにはちょうど良い時間がたった、ということか。